配置転換で減給すると違法になるのはどんな場合?
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東京労働局が公表している個別労働紛争の解決制度等に関する令和4年度の施行状況によると、民事上の個別労働紛争の相談件数は、2万9108件ありました。そのうち、「出向・配置転換」に関する相談は、1069件あり、全体の3.7%を占めています。
配置転換は、企業の裁量により行うことができますが、それに伴って労働者の給料を減給する際には注意が必要です。減給は、労働条件の不利益変更にあたりますので、一定の要件を満たさなければ違法と判断される可能性もあります。
今回は、配置転換による減給が違法になるケースや配置転換を拒否された場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
1、配置転換による減給が違法となるケースや裁判例
配置転換による減給が違法になるのは、どのようなケースがあるのでしょうか。以下では、会社が行う配置転換命令の根拠や配置転換による減給が違法になるケース・裁判例について説明します。
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(1)配置転換命令の根拠
配置転換とは、会社内で所属部署・職務内容・勤務地などを変更する人事異動をいいます。配置転換のことを略して「配転」と呼ぶこともあります。
このような配置転換は、雇用契約または就業規則などにより定められた人事権を根拠として行われる業務命令の一種となります。
そのため、会社側には、配置転換命令に関する一定の裁量がありますので、裁量の範囲内であれば、労働者に対して自由に配置転換を命じることができます。 -
(2)配置転換による減給が違法となるケース・裁判例
会社側に配置転換命令に関する裁量があるといっても無制限に裁量が認められるわけではありません。
以下の配置転換命令は人事権の濫用にあたり、違法と判断される可能性があります。- 配置転換に業務上の必要性がない
- 配置転換命令が不当な動機、目的をもってなされた
- 配置転換により労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じている
また、配置転換が有効であったとしても、減給が可能かは別の話です。配置転換は、あくまで元々の雇用契約の範疇で、働く場所が変わることにすぎません。それに対して、減給は、元々の雇用契約の内容を変更することになるのが通常だからです。
労働条件の不利益変更をする際には、原則として労働者の個別の同意が必要になります。労働者本人の同意がないまま減給をするのは、原則として違法となります。
元々の雇用契約に組み込まれていた、職位等に応じた給与テーブル上の評価でしかないという、新たな契約内容への変更にならないような論理構成がないと、減給を適法には行えません。
そのような仕組みを用意しておいてなお、減給について違法になる場合もあります。① 減給の幅が大きい
当初の雇用契約の範疇として労働者の同意があると評価できる場合であっても、減給の幅が大きい場合には、労働者の生活に甚大な影響を与えることになります。そのため、このような場合には労働者による同意は真意によるものではないと評価され違法と判断される可能性があります。
裁判例でも、労働者の同意を得て、賃金の25%を減額したという事案について、労働者による自由な意思に基づいてなされたものとはいえないとして、賃金減額を違法と判断したものもあります(東京地裁令和2年2月4日判決)。
② 不当な目的による減給
労働者を退職に追い込む目的や嫌がらせ目的など不当な目的による減給は、人事権の濫用として違法となります。
2、配置転換による減給が違法とならない仕組み
では、どのようなケースであれば配置転換による減給が違法とならないのでしょうか。以下では、減額の違法性の判断基準や具体的なケースについて説明します。
配置転換による減給が違法とならないケースとしては、以下のケースが挙げられます。
① 配置転換により賃金体系が変更になることが就業規則に明記されている
職位等に応じた給与システムが存在し、配置転換により賃金体系が変更になることが就業規則に明記されている場合、配置転換による賃金の減給は、契約内容としてすでに織り込み済みであるといえます。
このような場合には、労働者による個別の合意がなかったとしても、配置転換による減給を行うことができます。
ただし、このような方法で減給をする場合、就業規則が労働者に周知されており、就業規則で定められている賃金体系が合理的な内容でなければなりません。
② 懲戒処分としての減給処分
労働者への減給は、人事権の行使ではなく懲戒権の行使としての減給処分または降格処分としても行うことができます。
懲戒処分の減給は、以下の要件を満たす必要があります。
- 懲戒事由および懲戒の種類が就業規則に定められていること
- 労働者の行為が懲戒事由に該当すること
- 選択した処分が重すぎないこと
- 労働者に対して弁明の機会を与えたこと
これらの要件を満たしたうえで、減給処分をするのであれば、違法とはなりません。
ただし、懲戒処分としての減給では、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないというルールがある点に注意が必要です。
3、配置転換を拒否された場合の対処法
労働者が配置転換を拒否した場合には、以下のような対処法を検討しましょう。
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(1)まずは労働者と話し合い配置転換の必要性を説明する
労働者が配置転換を拒否した場合、まずは労働者と話し合いを行い、配置転換を拒否する理由を確認します。今後の労働者との関係性を考えると、労働者の理解を得たうえで配置転換をするのが望ましいといえますので、配置転換の必要性を説明し、労働者に納得してもらえるよう話し合いをする必要があります。
配置転換にあたって労働者から希望や条件が提示されたときは、可能な範囲で対応するようにしましょう。 -
(2)拒否する状態が続いた場合は退職勧奨や懲戒処分などの対応を検討する
話し合いを継続しても労働者が配置転換に応じないときは、退職勧奨やその他の措置を検討することになります。
退職勧奨とは、会社から労働者に対して退職を促すことをいいます。退職勧奨は、退職をすすめるというものに過ぎませんので、退職を強制(退職強要)しない限り、自由に行うことができます。
4、人事トラブルを弁護士に相談するメリット
人事トラブルでお困りの経営者の方は、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談するメリットを紹介します。
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(1)社員と代わりに交渉してもらえる
人事トラブルが生じた場合、経営者または会社の担当者が労働者との交渉を行わなければなりません。不慣れな交渉に時間や労力を割かれると、本来の業務にも支障が生じる可能性があります。
弁護士であれば、会社に代わって労働者と交渉を行い、交渉による時間や労力を大幅に削減することができます。 -
(2)減給を伴う配置転換に違法性がないか法的なアドバイスを受けられる
減給を伴う配置転換をする際には、配置転換と減給の両面から違法性をチェックしていかなければなりません。どのような場合に違法になるかは、具体的な事情によって変わってきますので、正確に判断するためには、法的知識と経験が不可欠となります。
弁護士であれば減給を伴う配置転換の違法性についても正確に判断することができます。誤った対応により労働者から訴えられてしまうリスクを減らすためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)就業規則や雇用契約書に問題ないか確認できる
労働者とのトラブルを回避するためには、就業規則や雇用契約書の記載が重要になります。
弁護士は、トラブルが生じた際の対応だけでなく、トラブルを未然に防ぐための予防法務も対応が可能です。弁護士が法的観点から就業規則や雇用契約書の内容チェックし、問題点を指摘・改善することで、労働者とのトラブルを回避できる可能性が高くなります。
5、まとめ
配置転換による減給は、就業規則に明記されていたり、懲戒処分としての減給処分であったりする場合は違法となる可能性は低いです。ただし、本人の同意がないまま配置転換を進めてしまうと違法となる可能性がありますので注意が必要です。
配置転換について社員とトラブルになりそうな場合は、弁護士のサポートが必要になりますので、まずはベリーベスト法律事務所 池袋オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています