摘発されたらどうなる? 風俗店が受ける処分内容と対策を弁護士が解説
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近年、風俗店に対する摘発が相次いでいます。警察庁による取り締まり状況の統計によると、令和6年に風営法違反で検挙された件数は737件、検挙人員は1048人でした。
中でも無許可営業・禁止区域営業・違法な客引きなどの検挙が多く、風営法違反による検挙件数全体の約8割を占めています。
本コラムでは、摘発の意味や対象となるケース・摘発後の処分などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和6年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」(警察庁)


1、摘発とは? どのようなケースが対象になるのか
摘発とは、具体的にどのような意味なのでしょうか? また、どのようなケースが摘発の対象となるのでしょうか。
以下では、摘発の意味と代表的なケース、そして混同されやすい「検挙」「告発」「逮捕」との違いについて解説していきます。
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(1)摘発の意味と代表的なケース
摘発とは、「犯罪行為などの悪事をあばいて社会的に公表する」ことです。法律用語ではないため、明確な定義があるわけではありません。
逮捕されたときだけでなく、容疑者が特定されていない場合や、家宅捜索・差し押さえを行った場合に使われるケースもあります。
風俗店が摘発の対象となる代表的なケースには、次のようなものがあります。- 無届け営業
- 性風俗営業禁止区域での営業
- 届出内容と実態の不一致
- 風営法違反
- 売春防止法違反
- 公然わいせつ罪
これらは、いずれも刑事処分や行政処分の対象になり得る違反行為です。知らなかったでは済まされないため、常に法令に則した運営を意識する必要があります。
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(2)検挙との違い
検挙とは、警察・検察などの捜査機関が犯罪行為をした人物を特定し、被疑者として扱うことです。摘発と同様に法律用語ではありませんが、捜査機関が主体となって特定の人物を捜査対象とする特徴があります。
一方、「摘発」はその前段階も含めた捜査や指導、取り締まり全体を表す幅広い表現であり、検挙を伴わない場合もあります。摘発=検挙ではありませんが、摘発された結果として検挙されるケースも多いでしょう。 -
(3)告発との違い
告発とは、犯罪の事実を知った第三者が捜査機関に対して申告し、処罰を求める意思表示をすることです。風俗店の場合、近隣住民からの告発がきっかけで、警察による検挙に発展するケースがあります。
摘発は方法を問わず世間に公表する行為全般を指す言葉であるため、「捜査機関」に申告する告発とは区別されます。 -
(4)逮捕との違い
逮捕とは、罪を犯した疑いがある人物の身柄を拘束する手続きで、刑事訴訟法に定めのある法律用語です。摘発に関連して逮捕が行われる場合もありますが、すべての摘発が直ちに逮捕につながるわけではありません。
刑事事件の被疑者を逮捕するには、現行犯逮捕の場合などを除き、裁判所の「逮捕状」が必要です。逮捕状は、基本的に被疑者が逃亡したり証拠隠滅したりする可能性がある場合に発布されます。
摘発とは異なり、逮捕には法律によってさまざまなルールが定められています。
2、摘発されたらどうなる? 処分の流れと罰則の内容
風俗店が摘発されると、刑事手続きが進められ、場合によっては重い処分が下されます。以下では、摘発された後の流れや罰則内容について具体的に確認していきましょう。
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(1)摘発からの刑事手続きの流れ
摘発されると、基本的に以下のような流れで刑事手続きが進行します。
① 警察による捜査
② 経営者や店舗スタッフへの事情聴取
③ 逮捕
④ 送検(送致)
⑤ 勾留請求
⑥ 起訴・不起訴の判断
⑦ 刑事裁判
摘発では犯罪の事実が公表されるため、犯罪があったことを警察などの捜査機関が把握することになります。摘発時点で被疑者が特定できていなかったとしても、その後に捜査が進められ逮捕される可能性はあるでしょう。
逮捕・送検後に勾留が決定すると、最大20日間刑事施設に身柄を拘束されます。勾留中に起訴・不起訴の判断が行われ、起訴された場合は刑事裁判を受けなければなりません。
刑事手続きの流れを見通した上で適切な対応を取るためには、早期に弁護士へ相談することが重要となります。 -
(2)罰則の内容とリスク
風営法などに違反した場合、以下のような罰則や処分を受けるリスクがあります。
- 営業停止命令
- 営業許可の取消し(廃業)
- 逮捕
- 罰金刑
- 拘禁刑(懲役刑)
罰則の内容は、違反内容によって異なります。状況によっては、罰金刑や拘禁刑(懲役刑)が下される可能性もあるでしょう。
また、法令違反の責任は摘発された店舗だけにとどまらず、経営者個人にもおよびます。経営者のリスク管理として、日常的な法令順守に加え、万が一摘発された場合の備えを怠らないようにすることが重要です。
お問い合わせください。
3、実際に摘発された風俗店の事例
実際に摘発された風俗店では、どのような行為が問題となったのでしょうか。以下では、令和4年から令和7年に報道された事例を取り上げて解説します。
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(1)無許可営業の事例
令和6年、デリバリーヘルス(無店舗型性風俗特殊営業)を無許可で運営していたとして、住所不定の男が風営法違反の疑いで逮捕されました。摘発されたのは、女性従業員をホテルなどに派遣し、客に性的サービスを提供させていたとされるデリヘル店です。
この男は、風営法で義務付けられている届出を行わず、インターネット上のサイトを通じて不特定の男性客から依頼を受け、女性従業員を派遣していた疑いがもたれています。事件は、警察への情報提供がきっかけで発覚しました。
警察は現在、余罪があるとみて捜査を進めています。なお、男の認否については捜査中のため明らかにされていません。 -
(2)性風俗店禁止地域における営業の事例
令和7年、性風俗店の営業禁止地域で営業を行っていたとして、風営法違反の疑いで団体職員など3人が逮捕されました。摘発された店では、個室内で店員に客への性的サービスを行わせていたとされています。
この事件では、風俗営業が禁じられている地域で、規制を無視して営業を続けていたことが問題視されました。
性風俗店の営業はどこでもできるわけではなく、各自治体の条例などによって営業禁止地域が定められています。営業を開始する前には、管轄区域の規制を確認することが非常に重要です。 -
(3)違法な客引きなどの事例
令和4年、都内で違法な客引きなどを行ったとして、迷惑防止条例違反や風営法違反の疑いで18人が逮捕されました。
問題となったのは、腕を絡めて店に連れ込もうとしたり、未成年者をガールズバーで働かせたりした行為などです。該当エリアの駅周辺ではしつこい客引きに関する相談が相次いでおり、警視庁による取り締まりが強化されていました。
服や腕を引っ張ったり、しつこくつきまとって勧誘したりする客引き行為は、風営法で禁止されていますので、従業員にも適切に周知・説明することが大切です。
4、風営法違反などで逮捕されたら弁護士に相談を
風営法違反などで逮捕された際は、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。以下では、弁護士への相談によって得られるメリットを解説します。
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(1)早期釈放が期待できる
弁護士に相談することで、勾留の回避や早期釈放が実現する可能性があります。
風営法違反などによる逮捕後は48時間以内に送検され、その後24時間以内に勾留請求もしくは釈放が決定されます(実務上は少ないかもしれませんが、公訴提起がされ、起訴後勾留となることもあり得ます)。勾留が決定すると最大20日間身柄が拘束されてしまうため、早期釈放を目指す際は勾留を避けることが重要です。
弁護士が介入することによって、意見書の提出や検察との交渉など、被疑者の釈放に向けた弁護活動が可能になります。長期の身柄拘束を避けたい場合は、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。 -
(2)前科がつくことを回避できる可能性がある
弁護士への相談・依頼によって、前科がつくことを回避できる可能性があります。
風営法違反などで起訴され、刑事裁判で有罪判決が下されると、刑事罰が科され前科がつきます。起訴された場合に無罪判決を勝ち取るのは困難なため、前科を回避したい場合には不起訴を獲得することが重要です。
弁護士が間に入ることで、不起訴を目指す弁護活動が可能になります。具体的には、悪質性の低さや反省・更生の姿勢を示すことなどが挙げられます。
重い刑事処分を避けるためにも、早期の弁護士への相談を検討しましょう。 -
(3)営業再開に向けたアドバイスができる
弁護士は、逮捕後の営業再開に向けた法的なアドバイスも行います。
釈放されたとしても、再度違反が発覚した場合、より厳しい処分を受ける可能性があります。風営法違反に関する事件の経験が豊富な弁護士であれば、再発防止策や営業形態の見直しなども含めてアドバイスが可能です。
違反行為の原因を正しく把握し、再び違反を繰り返さないようサポートを受けられれば、スムーズに営業を再開できるでしょう。
5、まとめ
風俗店が摘発されると、廃業や逮捕といった深刻なリスクがあります。このようなリスクを回避するためには、まず風営法や関連する法令の内容を正しく理解し、事前に対策することが重要です。
万が一摘発されて逮捕された場合には、できるだけ早めに弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで、長期の身柄拘束や前科を避けるための弁護活動を行えます。
また、摘発前であっても、風俗店の営業に関して法的な不安がある場合は弁護士への相談を検討してみてください。
ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士にご相談いただければ、状況に応じた適切な対策を講じ、サポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています