大麻使用罪の施行はいつ? 刑罰や改正のポイントについて

2025年05月19日
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大麻使用罪の施行はいつ? 刑罰や改正のポイントについて

令和5年に警視庁が検挙した薬物事件のうち、約4割が大麻事件でした。大麻事件による検挙人数は過去10年間で2倍以上に増加しており、大麻が社会問題化していることが分かります。

これまでの法律では大麻(マリファナ)の栽培や所持は違法でしたが、「使用」自体は処罰の対象外でした。しかし、令和6年12月12日から、「大麻使用罪」が施行され、大麻の使用が処罰の対象となりました。

逮捕され前科がついてしまった場合、今後の社会生活にも大きな影響を及ぼします。「大麻を使用したことがあるが、今後どうなるのか不安」という方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では大麻使用罪について、量刑(刑罰)や逮捕後の流れ、弁護士ができるサポートなどをベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が詳しく解説します。

出典:「警視庁の統計 令和5年(2023年)」(警視庁)


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1、大麻使用罪は令和6年12月12日から施行済み

大麻使用罪は、令和6年12月12日からすでに施行されています。これにより、大麻の「使用」も法律で禁止され、違反すると刑罰が科されることになりました

従来は、大麻に関する犯罪は「大麻取締法」という法律で定められていました。処罰の対象となる行為は所持・譲渡・譲り受け・輸入・輸出・栽培などに限られており、大麻の使用は処罰の対象外でした。
しかし、近年、若者を中心に大麻の乱用拡大が社会問題化しています。このため、大麻の使用も違法とし、取り締まりを強化する目的で、「大麻使用罪」が導入されました。

今回の法改正により、大麻に関する犯罪の規定は、大麻取締法から「麻薬および向精神薬取締法」へと移され、従来の「大麻取締法」の名称は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更されています。

なお、大麻の使用の刑罰化と同時に、大麻草から製造された医薬品(いわゆる「医療用大麻」)の施用等を可能とする法改正なども行われていますが、医療目的で適切に処方された場合に限られるため、一般の人が自由に使用できるわけではありません。

2、大麻使用罪の量刑(刑罰)はどのくらい?

改正後の「麻薬および向精神薬取締法」では、大麻は「麻薬」に分類され、その使用には厳しい刑罰が科されます(同法第2条第1項第1号)。

① 大麻使用罪の刑罰
  • 大麻を使用した場合:1か月以上7年以下の懲役(同法第66条の2第1項)
  • 営利目的で使用した場合:1年以上10年以下の懲役 + (情状により)300万円以下の罰金(同法第66条の2第2項)


大麻の使用を理由に逮捕・起訴されて有罪判決を受けた場合、初犯であれば執行猶予がつく可能性はあると思われますが、再犯の場合は実刑判決を免れないでしょう。
営利目的の使用は特に厳罰となり、懲役刑に加え300万円以下の罰金が科される可能性があります。このようなケースでは、初犯であっても執行猶予がつかず、実刑となることも考えられます。

麻薬を使用できるのは、以下のいずれかに該当する場合のみです(同法第27条第1項)。

② 麻薬の使用が違法にならないケース
  • 麻薬研究者が、研究のため施用する場合(同項第1号)
  • 麻薬施用者から施用のため麻薬の交付を受けた者が、その麻薬を施用する場合(同項第2号)
  • 麻薬小売業者から麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り受けた者が、その麻薬を施用する場合(同項第3号)


上記のいずれにも該当しないにもかかわらず、大麻を含む麻薬を使用すると違法になるため注意が必要です。

3、大麻に関するその他の犯罪行為

大麻に関する犯罪は、「使用」だけではありません。他にも以下の行為が厳しく処罰されます。

大麻に関する禁止行為 法定刑
大麻の輸入、輸出、製造 1年以上10年以下の懲役(麻薬および向精神薬取締法第65条第1項第1号)

※営利目的がある場合:1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(同条第2項)
大麻の製剤、小分け、譲渡、譲り受け、所持 7年以下の懲役(同法第66条第1項)

※営利目的がある場合:1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金(同条第2項)
大麻に関する広告
(違法広告)
3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または懲役と罰金を併科(同法第69条第6号、第29条の2)

大麻に関する広告とは?
日本では、医薬関係者や科学研究者を対象とした専門的な文脈でない限り、一般的に大麻の使用を助長するような広告・宣伝も違法とされています。(同法第29条第2項)

たとえば、
  • 「大麻は安全」「合法化されるべき」などの宣伝行為
  • 大麻を使用できる店や場所を紹介する行為
  • 海外での大麻購入を促す行為
このような行為をした場合でも、処罰の対象になるため、注意が必要です。
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4、大麻使用罪で逮捕された後の流れ

大麻を使用した場合は、警察に逮捕されるおそれがあります。逮捕後の刑事手続きは、以下の流れで進行します。

  1. (1)逮捕~勾留請求

    逮捕された被疑者は身柄を拘束され、警察官や検察官の取り調べを受けます。被疑者には黙秘権があるので、取り調べに対しては答えなくても構いません。取り調べでの発言がその後の処分に大きく影響するため、慎重に対応することが重要です。

    逮捕の期間は最長72時間で、その間は家族と面会することができません。ただし、弁護士は被疑者といつでも面会することが可能です弁護士を呼べば、取り調べに関するアドバイスを受けられるほか、家族との窓口にもなることができます

    逮捕の期間の満了後も、引き続き被疑者の身柄を拘束すべきと検察官が判断した場合は、裁判官に対して勾留請求を行います。裁判官は、罪証隠滅や逃亡のおそれなどが認められると判断した場合に勾留状を発行し、それにより勾留が決定します。

  2. (2)起訴前勾留~起訴・不起訴

    勾留が決定すると、最大20日間身柄が拘束されることになり、被疑者は引き続き取り調べを受けます。

    起訴前勾留の期間中は、弁護士が早期の身柄解放や不起訴に向けた弁護活動を行います。
    大麻を二度と使わない強い決意や、更生をサポートしてくれる家族などの存在を示せば、重い刑事処分の回避につながります。

    検察官は、原則として起訴前勾留の期間が満了するまでに、被疑者を起訴するかどうか決めます。不起訴処分となった場合は、その場で釈放となります。

  3. (3)起訴後勾留

    被疑者が起訴された場合は、「被告人」に呼び方が変わり、身柄拘束が起訴前勾留から起訴後勾留へ移行します。起訴後勾留の期間は当初2か月間で、捜査の必要に応じて1か月ごとに更新されます(刑事訴訟法第60条第2項)。

    起訴後勾留中は、被告人は弁護士と協力して、公判手続き(刑事裁判)に向けた準備を整えます。
    また、裁判所に対して保釈を請求することも可能です。保釈請求が認められれば、保釈保証金を預けることを条件として、一時的に身柄が解放されます。

  4. (4)公判手続き~判決

    起訴からおおむね1か月程度が経過した時期に、裁判所の法廷で公判手続きが行われます。

    公判手続きでは、検察官が大麻の使用などの犯罪事実を立証します。それに対して被告人は、罪を認めるか、または否認して争うことになります。どのような方針で公判手続きに臨むかは、事前に弁護士と話し合って決めましょう。

    犯罪要件がすべて認められると裁判所が判断した場合は、有罪判決が言い渡されます。犯罪要件がひとつでも欠けている場合は、無罪判決が言い渡されます。

    なお、大麻の使用が初犯であれば、3年以下の懲役が言い渡される場合に限り、執行猶予がつくことがあります(刑法第25条第1項第1号)。

  5. (5)控訴・上告~刑の執行

    第一審判決に不服がある場合は控訴、控訴審判決に不服がある場合は上告をすることができます。
    控訴・上告の期間は、判決が言い渡された日の翌日から起算して14日間です(刑事訴訟法第373条、第414条)。

    期間内に適法な控訴・上告が行われなかった場合、または上告審判決が宣告されて一定期間が経過した場合には、判決が確定します。
    有罪判決が確定した場合は、原則として刑が執行されます。ただし、執行猶予がついた場合は、一定期間刑の執行が猶予されます。

5、大麻使用罪で逮捕された方のために、弁護士ができること

大麻使用罪で逮捕されてしまった方のために、弁護士は以下のようなサポートが可能です。
まだ逮捕されていなくても、事前に弁護士へご相談いただければ、万が一逮捕されてしまった場合に迅速な対応が可能となります。「軽い気持ちで大麻を使用してしまったが、逮捕されるのではないかと不安だ」という方は、お早めに弁護士へご相談ください

  1. (1)警察に自首する際の同行

    大麻使用が捜査機関に発覚していない段階で自首すれば、刑が減軽されることがあります(刑法第42条第1項)。また、不起訴処分となる可能性も高まります。

    弁護士にご相談することで、警察署へ自首する際に同行し、警察官への説明や精神的なサポートなどを受けることができます。

  2. (2)不起訴や早期釈放に向けた弁護活動

    罪を犯したことが事実でも、反省の態度を示し、再犯の可能性が低いと判断される場合は不起訴(起訴猶予)となる可能性があります。
    また、逮捕や勾留による身柄拘束の必要性が乏しい場合は、弁護士は検察官や裁判官に対して、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを主張し、早期釈放を求めます。

    弁護士は、被疑者が一日も早く刑事手続きや身柄拘束から解放されるように、不起訴や早期釈放に向けた弁護活動を行います。

  3. (3)量刑を軽減するための弁護活動

    大麻の使用によって起訴されたとしても、裁判で適切な弁護活動を行うことで、刑が減軽されて執行猶予がつく可能性は十分あります。

    弁護士は被告人の家族とも連携して、できる限り量刑を軽くできるように弁護活動を行います。

  4. (4)薬物依存治療専門施設の紹介

    大麻の依存性は覚醒剤ほど強くないと言われることもありますが、使用を続けるうちに精神的依存が生じ、やめられなくなるケースも少なくありません。
    大麻への使用を断ち切るためには、適切な治療やサポートが重要です。弁護士に相談することで、ご本人の状態に合った薬物依存治療専門施設の紹介や、大麻依存からの更生に向けた支援を受けることができます。

6、まとめ

現在では、大麻所持などに加えて大麻の使用も処罰の対象となっています。
過去に大麻を使ったことがある方は、万が一逮捕されてしまうケースに備えて、弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。大麻を使ってしまい、逮捕されるのではないかと不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています