メンズエステで性行為を強要しトラブルに! 逮捕されたらどうなる?

2023年06月22日
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メンズエステで性行為を強要しトラブルに! 逮捕されたらどうなる?

男性向けのサービスとして「メンズエステ」の人気が高まっています。メンズエステとは、おもにリラクゼーションやマッサージなどのサービスを提供している男性向けエステティックサロンです。メンズエステは、医療行為や美容、性風俗などのサービスを提供しない限り特別な許可を必要とされないものであり、池袋エリアには多く存在しています。

特に中国系の女性やタイ人・ベトナム人などの東南アジア系の女性が勤務しているメンズエステの多くでは、「抜き」や「本番行為」と呼ばれる、実質的に性風俗と同様のサービスが提供されています。日本人女性が勤務しているメンズエステでも、「キワ攻め」をはじめとして、性的要素のあるサービスが提供されることは多々あります。

そのため、メンズエステでは「性行為の強要」に関するトラブルが頻繁に起きています。顧客である男性が女性スタッフに対して性的なサービスを要求したり、強引に性行為に及ぼうとしたため、女性スタッフや店舗側から「訴える」と言われる事態が多々発生しているのです。

本コラムでは、メンズエステにおける性行為の強要で成立し得る罪や逮捕の可能性、トラブルの解決方法などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。

1、メンズエステで女性スタッフに性的な行為を強要した場合に成立し得る罪

メンズエステは、アロマテラピーやマッサージといったリラクゼーションを目的としたサービスですが、エステティシャンであるスタッフの大部分は若い女性です。
しかも、女性向けの美容エステとは異なり、露出度の高い衣装を着用していたり、身体を密着させたりと、性的な要素が伴っていることも多々あります。
そのため、メンズエステの女性スタッフに対して性風俗店と同様のサービスを求めたり、ルール外の裏交渉をもちかけて性交渉を求めたりする利用客も多々いるのが現実です。

もし、メンズエステの女性スタッフに性的な行為を要求して断られたにもかかわらず、強引に行為に及んだ場合は「強制わいせつ罪」や「強制性交等罪」などの犯罪が成立する可能性があります

  1. (1)強制わいせつ罪

    女性スタッフが拒否しているにも関わらず、無理やり胸部や臀部などの身体を触ったり、強引にキスや自身の陰部を触らせる等といった行為をした場合には、刑法第176条の「強制わいせつ罪」が成立します。

    強制わいせつ罪とは、「13歳以上の者に暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした」場合に成立する犯罪です。
    ここでいう「暴行・脅迫」とは、殴ったり蹴ったり等の有形力の行使や、「抵抗すると痛い目に遭うぞ」といった害悪の告知に限らず、体格などの差から女性スタッフが抵抗できない場合に、わいせつ行為そのものが暴行・脅迫にあたる場合もあります。

    強制わいせつ罪の法定刑は「6か月以上10年以下の懲役」です。

  2. (2)強制性交等罪

    女性スタッフに対して、無理やり性交・肛門性交・口腔性交をした場合は、刑法第177条の「強制性交等罪」が成立します。

    基本的に、性交・肛門性交・口腔性交などの行為は、メンズエステでは禁止されています。
    ただし、一部のメンズエステ(とくにアジア系)では、店側が注意書きに「本番禁止」と書いていても、女性スタッフから追加料金と引き換えにこれらの行為を提案する場合があります。いわゆる「裏オプション」です。
    しかし、たとえ女性スタッフから「追加料金で裏オプションが楽しめます」等ともちかけられたり、交渉によって性的行為に同意させたとしても、後になって女性スタッフが「無理やり性的行為をさせられた」と主張するおそれがあります。
    同意があったという事実を証明することは困難であるため、女性スタッフに「無理やりだった」と言われてしまった場合、男性にとっては厳しい展開となるでしょう。

    法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
    有罪となった場合、原則として執行猶予はつかず、刑が減軽されない限り必ず刑務所へ収監されてしまう重罪です。

2、わいせつ以外の行為でも罪を問われることがある

強制わいせつや強制性交等にあたる直接的な行為をしなくても、盗撮したり女性スタッフに暴力をふるったりした場合には、迷惑防止条例違反や暴行罪などに問われる可能性があります。

  1. (1)盗撮行為があった

    女性スタッフによるサービスの様子を隠しカメラで撮影する行為は、ほとんどのメンズエステで禁止されています。
    メンズエステには店舗型のほかにもラブホテルや自宅まで女性スタッフが向かう「出張型」があります。しかし、自宅であっても許可を得ていないのにサービスの様子をひそかに撮影した場合、「盗撮」にあたります。

    東京都の迷惑防止条例では、第5条1項2号において、「人が通常は衣服の全部または一部を着けないでいるような場所や、不特定または多数の人が出入りする場所で、裸や下着姿を撮影する行為」が禁じられています。

    迷惑防止条例違反の罰則は、「1年以下の懲役または100万円以下」の罰金です。
    また、常習と判断された場合、「2年以下の懲役または100万円以下」の罰金に加重される可能性もあります。

  2. (2)脅すような会話があった

    たとえば女性スタッフに対して「メンズエステで働いていることを家族にばらすぞ」などと告げる行為も刑法第222条1項の「脅迫罪」という犯罪にあたります。
    脅迫罪とは「生命・身体・自由・名誉・財産への危害を告げる行為」を罰するものであり、法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    さらに、女性スタッフを脅したうえで、義務のない行為を強いた場合、刑法第223条1項の「強要罪」が成立する可能性があります。
    たとえば「本番に応じないならSNSで悪い口コミを広めるぞ」などと脅迫した場合です。
    強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。

  3. (3)相手に暴力をふるった

    女性スタッフの対応に不満を感じたり、思いどおりにならなかったりしたことに立腹して、殴る・蹴る・つきとばす・首を絞めるなどの暴力をふるった場合には、刑法第208条の「暴行罪」が成立します。
    暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。

    さらに、暴力をふるった結果として女性スタッフにケガを負わせてしまった場合には、刑法第204条の「傷害罪」となります。
    傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。

3、トラブルを起こして逮捕される可能性は? 逮捕後の流れ

メンズエステの利用からトラブルに発展すると、男性としては、「逮捕されてしまうのか?」という点が気がかりになるでしょう。
以下では、メンズエステのトラブルが原因で逮捕される可能性や、逮捕されてしまった後の流れを解説します。

  1. (1)逮捕の可能性は高い

    令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に検察庁で処理された事件のうち逮捕が絡んだ事件の割合は平均で34.1%でした。

    メンズエステでのトラブルで主に適用される可能性のある犯罪で逮捕された割合は次のとおりです。

    • 強制わいせつ罪……53.7%
    • 強制性交等罪……57.6%


    特に性犯罪に分類される犯罪は厳しい刑罰が予定されているものが多く、逃亡や証拠隠滅を図るおそれが強いと判断されやすいため、逮捕の可能性が高くなるのです

  2. (2)逮捕後の刑事手続きの流れ

    警察に逮捕された後は、以下のような流れで刑事手続きを受けることになります。

    1. ① 逮捕
      警察署の留置場に収容され、身柄拘束(最大48時間)を受けます。
      逮捕の理由となった犯罪の認否などについて取り調べを受けることになり、自宅に帰ることも会社や学校へ行くことも許されません。

    2. ② 送致
      身柄と捜査書類が検察官へと引き継がれる手続きであり、ニュースなどでは「送検」とも呼ばれています。
      送致を受理した検察官の段階でも身柄拘束(最大24時間)を受けたうえで取り調べが行われたのち、釈放すべきか身柄拘束を延長(勾留)するべきか判断されます。

    3. ③ 勾留
      検察官の勾留請求を受けて裁判官が許可すると、身柄拘束を受けます。初回の期間は10日間ですが、捜査が遂げられていない場合はさらに10日間以内の延長が認められています。

    4. ④ 起訴
      勾留が満期を迎える日までに検察官が起訴するかどうか判断します。
      このとき、起訴されなければ「不起訴」となります。

    5. ⑤ 被告人勾留
      起訴された容疑者は「被告人」となり、拘置所に移管されて身柄拘束を受けます。
      この段階からは一時的な身柄解放である「保釈」の請求が可能となりますが、保釈が認められなかった場合には、刑事裁判が終了するまで釈放されません。

    6. ⑥ 刑事裁判
      起訴からおよそ1~2か月後に、刑事裁判の初公判が開かれます。
      以後、おおむね1か月に一度のペースで公判が開かれ、数回の審理を経て判決が言い渡されます。

4、メンズエステでのトラブルを解決したいなら弁護士に相談を

以上から、メンズエステにおけるトラブルの多くは、厳しい刑罰が規定されている犯罪が適用されてしまいます。
逮捕や刑罰に伴う多大な不利益を回避するため、メンズエステでトラブルを起こしてしまったら、速やかに弁護士に連絡してください

  1. (1)示談交渉による穏便な解決が期待できる

    メンズエステにおけるトラブルを解決するためにもっとも有効な手段とは、女性スタッフとの間で示談を成立させることです。
    女性スタッフに対して真摯に謝罪を行い、精神的苦痛に対する慰謝料や仕事を休んだ補償などを含めた示談金を支払うことで、警察への被害届や刑事告訴の取り下げを請いましょう。

    基本的に、示談交渉は当事者間で行われます。
    しかし、メンズエステにおけるトラブルでは、法律上の被害者である女性スタッフだけでなく店側が介入してくるケースも多々あります。
    女性スタッフと店側がグルとなり、トラブルを起こしたという弱みにつけ込まれて不当に高額な請求を受けてしまう可能性も低くはないのです。

    示談交渉は、弁護士に代理人を依頼することができます
    弁護士であれば冷静に交渉を行うことができるため、被害にあった女性スタッフの感情に配慮しながら穏便な解決を図れます。
    また、もし店側から不当に高額な請求をされた場合には、弁護士は依頼者である男性の利益を守るために毅然とした対処を行います。

  2. (2)逮捕や厳しい刑罰の回避が期待できる

    もし、強制わいせつ罪や強制性交等罪に相当する行為を実際に行ってしまったのなら、逮捕されて刑罰が科される事態も想定できるでしょう。
    逮捕されると長期にわたって身柄を拘束されることになり、実刑判決を受ければ刑務所へと収監されてしまうことになるのです。

    ただし、容疑をかけられているとはいえ、悪質なケースではなく定まった住居や職業があるので逃亡・証拠隠滅を図るおそれも少ないことが認められれば、逮捕を避けて任意の在宅事件として扱われる可能性があります。
    メンズエステでトラブルを起こしてしまった場合、できるだけ早く弁護士に依頼することで捜査機関に対して逮捕や起訴を避けるよう弁護活動を行うことができます

5、まとめ

メンズエステはあくまでもリラクゼーションなどを目的としたサービスであり、性風俗店ではありません。
性的なサービスを強要すれば強制わいせつや強制性交等などのトラブルに発展するおそれがあるため、利用にあたっては注意が必要です。

メンズエステの利用でトラブルに発展してしまった場合、犯罪に問われる可能性は高くなります
厳しい刑罰も想定されるため、逮捕や刑罰を避けられない事態になってしまうかもしれません。
また、不当な請求を受けても不利な立場であることから反論できず、多額の賠償を求められてしまうおそれもあります。

穏便な解決を目指すためには、すぐに弁護士に連絡することが大切です。
もしメンズエステの利用でトラブルになってしまった場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください

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