フリマアプリの利用が「古物営業法違反」になる場合や科される罰則を解説
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メルカリをはじめ、ヤフーオークションやラクマなど、個人が使用済みの中古品や不要品などを簡単に販売できるサービスが広く普及しています。
ただし、販売側として継続的に利用する場合には「古物営業法」という法律に触れる可能性があることに注意が必要です。
本コラムでは、フリマアプリなどの利用と古物営業法の関係、古物営業法に違反するケースや罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
1、「古物営業法」とはどんな法律なのか?
まずは「古物営業法」がどのような法律なのかについて、概要を解説します。
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(1)古物営業法の目的
古物営業法第1条には、この法律が定められた目的が明記されています。
同条によると、古物営業法は「盗品などの売買の防止」と「速やかな発見」を図るために必要な規制をおこなうことで、窃盗などの犯罪防止や被害の迅速な回復を実現するという目的で定められた法律です。
盗まれたりだまし取られたりした被害品が買取業者などに売却されると、事情を知らない第三者の手にわたり、被害品の行方を追うことが難しくなります。
また、売却することで簡単にお金に換えることができるなら、「お金がないから物を盗んで換金しよう」という考えに至る者も増えてしまうでしょう。
このような事態を防ぐために、古物を扱う業者を許可制にして、買い取りや交換といった取引が生じた際には相手方の確認などをおこなったり、不正品の疑いがあるときは警察に申告したりといった義務を課すための法律が「古物営業法」なのです。 -
(2)「古物」の定義
古物営業法における「古物」とは、同法第2条1項において、以下のように定義されています。
- 一度使用された物品
- 使用されない物品で使用のために取引された物
- これらの物品に幾分の手入れをした物
この定義に従うと、使用されたことがある中古品だけでなく、使用のために購入したものの使用しないまま持っていた、いわゆる新古品と呼ばれる物や、古くなった物に修理やメンテナンスを加えた物などは「古物」に該当します。
ただし、これらの定義に該当すればなんでも古物にあたるわけではありません。
古物営業法の規制対象となる古物は「古物営業法施行規則」によって定められている13品目に限られます。- ① 美術品類
- ② 衣類
- ③ 時計・宝飾品類
- ④ 自動車(部分品を含む)
- ⑤ 自動二輪車・原動機付自転車(部分品を含む)
- ⑥ 自転車類(部分品を含む)
- ⑦ 写真機類(カメラ・レンズなど)
- ⑧ 事務機器類(ワープロ・パソコン・プリンター・コピー機・ファクシミリ装置など)
- ⑨ 機械工具類(電気類・工作機械・土木機械・化学機械・工具など)
- ⑩ 道具類(家具・じゅう器・運動用具・楽器・オーディオ機器・ゲームソフトや音楽ソフトなど)
- ⑪ 皮革・ゴム製品類(カバン・靴など)
- ⑫ 書籍
- ⑬ 金券類(商品券・乗車券・郵便切手など)
古物営業法の規制対象は以上の13品目ですが、中古品などの買取・販売が一般的になっている物品はおおむねカバーされているため、現実的にはほとんどの物が対象に含まれると考えておいたほうがよいでしょう。
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(3)古物営業法に違反するとどうなるのか?
古物営業法に定められている違反行為のうち、悪質な行為には懲役や罰金といった刑事罰が科せられます。
刑事罰を受けた経歴は前科として残り、資格や許認可、海外渡航などの制限を受けることがあるので、決して軽視してはいけません。
また、違反行為のなかには過料という行政罰が科せられるものも存在するほか、悪質な違反があった場合は許可の取り消しや一定期間の営業停止といった行政処分を受けることもあるのです。
2、古物営業法に違反する行為や罰則
以下では、古物営業法に違反する行為のうち、とくに注意すべき行為と罰則を解説します。
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(1)無許可営業
古物営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会からの許可を受けなくてはなりません。
許可を受けないで古物の買取・販売をおこなうと「無許可営業」となり、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
また、悪質な場合は懲役と罰金の両方が科せられることもある点に注意してください。
無許可営業にあたる行為をしている人のなかには、「古物営業法の規定を知らなかったので許可を受けていなかった」という人や「ビジネスとして軌道に乗ってから許可を取るつもりだった」という人もいるでしょう。
しかし「知らなかった」「あとで許可を取るつもりだった」といった事情を特別に許したり刑罰を軽くしたりするといった定めは存在しないため、厳しく処罰されるおそれがあるのです。 -
(2)名義貸しによる営業
古物営業の許可を受けた古物商は、自分の名義を他人に貸して古物営業をさせてはいけません。
いわゆる「名義貸し」によって他人に古物営業をさせた者には、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
また、他人の名義を借りて古物営業を営んだ者も、自分自身が許可を受けていないので無許可営業として処罰されることなるのです
たとえば、家族や親しい友人などが古物営業の許可を受けているからといって、その名義を使って古物の買取・販売をしていると、名義を貸した側も借りた側も処罰の対象となります。
なお、古物営業の許可を受けている家族が死亡したときは、同居親族か法定代理人が都道府県公安委員会に許可証を返納しなくてはなりません。
許可証の返納を怠ると5万円以下の過料が科せられます。 -
(3)許可申請書の虚偽記載
古物営業の許可にかかる申請書類には、氏名や住所、主たる営業所の名称と所在地などを正しく記載しなければなりません。
許可申請書に虚偽がある場合も、無許可や名義貸しと同じく3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
たとえば、古物営業は「住居の定まらない者」に許可できませんが、住居不定である事実を隠すために実家や友人宅などに居住しているかのような記載をして申請すると虚偽記載として処罰の対象となります。
お問い合わせください。
3、フリマアプリでの取引に古物営業許可は必要か?
これまで、古物営業法はビジネスとして中古品などを扱う業者が気をつけるべきものであり、個人とはほとんど縁のない法律でした。
しかし、インターネットが普及して個人間の売買が簡単にできるようになってからは、古物営業法の規定に触れるような取引をする個人が増えています。
以下では、近年急速に利用者が増えているフリマアプリの利用と古物営業法の関係や、フリマアプリでの取引に古物営業の許可は必要なのかどうかについて解説します。
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(1)個人的な不要品などの販売なら営業許可は不要
まず前提となるのは、個人が必要としなくなった物品などを販売する場合には古物営業法の規制を受けない、ということです。
たとえば、メルカリで個人的な不要品などを販売するだけなら、古物営業の許可を受ける必要はありません。
古物営業法は、古物の売買・交換をする営業のうち「古物を売却すること」または「自己が売却した物品をその相手から買い受けること」のみをおこなう形態を規制対象から除外しています。
個人的な不要品も法律上は「古物」に該当しますが、古物営業法は盗難品などの買い受けを防ぎ、もし買い受けられたとしても誰が売却したのかを明らかにして犯人の検挙や被害回復を実現しやすいように定められた法律であるため、「売却のみ」という形態を規制に含んでいないのです。 -
(2)要注意! フリマアプリの利用で古物営業許可が必要なケース
基本的にフリマアプリの利用では古物営業の許可を受ける必要はありませんが、以下のような形態を取っている場合には、古物営業許可を必要とする可能性があります。
- 自分で使用する目的ではなく、そもそも販売目的で仕入れた物を販売している
- 転売目的で購入した物を販売している
- 壊れた物や傷んだ物、いわゆる「ジャンク品」を仕入れて修理や修繕をしたうえでリユース品として販売したり、部品の一部を抜き取って販売したりしている
- 第三者から出品を依頼されて委託販売をおこなっている
これらの行為が、反復・継続しておこなわれている場合は、個人が不要品を売却処分しているのではなく「古物営業」と判断され、許可が必要になるのが原則です。
また、個人が使用するには見合わないほど大量に同じ商品を出品したり、メーカーが発売したばかりの商品を何度も出品していたりする場合にも、古物営業の許可が必要と判断される可能性があります。
たとえば市場に出回っている商品を安値で仕入れて定価程度で売却することで利益を得る「せどり」や、プレミアがつきそうな商品を定価で購入して高値で販売する「転売」「転売ヤー」と呼ばれる行為は、その行為自体には違法性がなくても、古物営業法の許可が必要になるのです。
4、古物営業法違反の疑いをかけられたら弁護士に相談を
フリマアプリなどの普及で、古物営業法は業者だけでなく個人にも適用される可能性のある身近なものになりました。
副業やスモールビジネスが流行しているため、フリマアプリなどを使ってお金を稼いでいる人も少なくありませんが、取引の形態によっては古物営業法に違反する危険があります。
思いがけず古物営業法違反の疑いをかけられてしまった場合は、まず弁護士に相談してください。
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(1)実際に違反となるのかを正確に判断できる
フリマアプリなどでの取引が古物営業法に違反するかどうかを判断するためには、取引の形態やこれまでの経過・実績などを詳しく調べる必要があります。
実際は古物営業法の規制を受けない形態なのに、取引の表面だけをみて疑いをかけられているという可能性もあるでしょう。
逆に、自分では規制対象外だと思っていても、実際に詳しく調べると古物営業の許可が必要な場合もあり得ます。
法令の知識を持っていない個人が判別するのは困難であるため、まずは弁護士に相談して実際に違反にあたるのか、違反にあたらないならどういった点を主張すればよいのか、違反にあたるならどうすれば解決できるのかのアドバイスを受けることが大切です。 -
(2)刑罰や行政処分の回避・軽減に向けたサポートが期待できる
古物営業法に違反すると、懲役や罰金といった刑事罰のほか、行政罰としての過料や許可の取り消しや営業停止といった行政処分を受けるおそれもあります。
違反行為であることを理解したうえで悪質な違反を繰り返したといった場合には、処罰や処分を避けることも難しいでしょう。
しかし、古物営業法が定められた昭和24年当時では、インターネットが普及して個人が古物取引を簡単にできる時代が到来するとは想定していなかったはずです。
株式会社メルカリの調査によると、令和4年(2022年)中のメルカリの月間利用者数は2200万人以上で、1秒間に7・9個が販売されているというデータが公開されています。
これだけ多くの人が古物の取引に関わっている以上、古物営業法の規制内容をまったく知らなかったり、正しく理解していなかったりするまま利用しているケースが多々あると考えられます。
古物営業法は、そもそも「違反者を罰する」というよりも「犯罪の予防と被害品の迅速な回復を図る」という性格が強い法律です。
違反行為があることを関係機関から指摘されたとき、まずは違法な取引をただちに中止したうえで正しく許可を受けるなど違法状態を解消すれば、厳しい刑罰や行政処分を免れられたり、軽減されたりする可能性を高められます。
ただし、どのような対策を講じれば解決できるのかということを個人で判断するのは困難です。
また、行政上の手続きや関係機関への説明などには法的な知識と経験が求められる場合も少なくありません。
そのため、法律の専門家である弁護士に、早い段階からサポートを求めることをおすすめします。
5、まとめ
フリマアプリの普及によって、個人でも簡単に古物を販売できる環境が整いました。
不要品を捨てるのではなく必要とする人に売るという習慣が広がることは、個人の消費活動の活発化や資源の保護といった良い効果をもたらすといえますが、取引の形態や方法などによっては古物営業法に違反してしまうおそれもあります。
もしフリマアプリなどの利用で古物営業法違反の疑いをかけられてしまったなら、まずは弁護士に相談することが大切です。
古物営業法に関するトラブルやお悩みをお持ちの方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
弊所の弁護士が、実際に違反にあたるのかどうかを判断したうえで、事態の解決に向けた適切な対応をおこないます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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