所定時間外労働の割増賃金はどれぐらい? 基本の計算方法

2023年09月26日
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所定時間外労働の割増賃金はどれぐらい? 基本の計算方法

会社が従業員に支払うべき残業代の金額は、「所定労働時間」と「法定労働時間」を基準に計算されます。

会社からの支払額が少ないと感じた場合には、残業代を正しく計算するため、弁護士に相談してみましょう。

本コラムでは、所定労働時間と法定労働時間の違い、残業代の計算手順・計算例、未払い残業代の請求方法などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。

1、所定労働時間と法定労働時間|残業代に関するルールの違い

残業代を計算する際には、「所定労働時間」と「法定労働時間」について正しく理解する必要があります。まずは所定労働時間と法定労働時間の違いや「法定内残業」と「時間外労働」の違いについて、基本的なポイントを解説します。

  1. (1)所定労働時間と法定労働時間の違い

    「所定労働時間」とは、労働契約上の始業から終業までの時間から、労働契約上の休憩時間を差し引いた時間をいいます
    たとえば、勤務時間が9時から17時であり、そのうち休憩1時間とされている場合には、1日の所定労働時間は7時間となります。

    これに対して「法定労働時間」は、労働基準法によって定められた労働時間の上限です。法定労働時間は原則として、1日当たり8時間・1週間当たり40時間とされています(労働基準法第32条)。

    一般に「残業」と呼ばれているのは、所定労働時間を超える部分の労働時間です
    「残業」はさらに、法定労働時間内の「法内残業」と、法定労働時間を超える「法外残業」の2つに分けられます。

  2. (2)法内残業|賃金の割増なし

    「法内残業」とは、所定労働時間を超えるものの、法定労働時間は超えない部分の労働時間です

    たとえば1日の所定労働時間が7時間の場合、原則として、法定労働時間(8時間)に達するまでの1時間分の残業が法内残業に当たります。
    ただし、1週間の労働時間が40時間を超える場合は、法外残業となります。

    法内残業については、労働基準法に基づく割増率は適用されず、残業代として通常の賃金を支払えば足ります。
    たとえば、1時間当たりの基礎賃金(後述)が2000円の労働者が1時間の法内残業をした場合、残業代は2000円となるのです。

  3. (3)法外残業|割増賃金が発生

    「法外残業」とは、法定労働時間を超える部分の労働時間です「法定外労働」「時間外労働」などと呼ばれることもあります

    具体的には、1日8時間を超える部分の労働時間が法外残業に当たります。また、1日のうち8時間以内の部分でも、1週間当たりの労働時間が40時間を超える部分については法外残業となります。

    法外残業については、使用者は労働者に対して、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
    たとえば、1時間当たりの基礎賃金が2000円の労働者が1時間の法外残業をした場合、残業代は2500円以上とする必要があるのです。

    なお、月60時間を超える部分の時間外労働については、通常の賃金に対して50%以上の割増賃金の支払いが必要です(中小事業主の場合、2023年3月までは適用除外)。

2、労働基準法に基づく割増賃金率

残業代の金額は、労働基準法に基づく割増率を適用して計算します。残業代の割増率は、残業(労働)の種類に応じて以下のとおりです。

法内残業 割増なし
法外残業 25%(50%※)
休日労働(法定休日の労働) 35%
深夜労働(午後10時から午前5時までの労働) 25%
法外残業かつ深夜労働 50%(75%以上※)
休日労働かつ深夜労働 60%

※月60時間超の時間外労働(中小事業主の場合、2023年3月までは適用除外)

3、残業代計算の手順・計算例

残業代の計算は、以下の手順で行います。



以下では、具体的な数値を用いながら、計算の仕方を解説します。

  1. (1)1時間当たりの基礎賃金を求める

    残業代計算の基礎となるのは、「1時間当たりの基礎賃金」です。時間単価ともいいます。

    「基礎賃金」とは、計算期間中に支給される賃金の総額から、以下の手当を除外した金額をいいます。ただし、費目の名目から一律的に判断されるわけではなく、実質的側面を重視して判断される。

    • 時間外労働手当、休日手当、深夜手当(残業手当)
    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 一か月を超える期間ごとに支払われる賃金


    基礎賃金額を月平均所定労働時間で割ると、1時間当たりの基礎賃金が求められます。

    たとえば、ある月の基礎賃金額が45万円、月平均所定労働時間が150時間だとします。
    この場合、1時間当たりの基礎賃金は3000円となるのです。

  2. (2)残業時間を集計する

    次に、残業の種類ごとに区分して残業時間を集計しましょう。

    (例)
    • 法内残業:15時間
    • 法外残業:10時間(うち深夜労働2時間)
    • 休日労働:10時間(うち深夜労働2時間)
  3. (3)割増率を適用して残業代を計算する

    1時間当たりの基礎賃金と残業時間が把握できたら、残業の種類ごとに割増率を適用して残業代を計算します。

    残業代
    =1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数


    (例)
    • 1時間当たりの基礎賃金:3000円
    • 法内残業:15時間
    • 法外残業:10時間(うち深夜労働2時間)
    • 休日労働:10時間(うち深夜労働2時間)

    法内残業の残業代:
    3000円×15時間
    =4万5000円

    法外残業の残業代(深夜手当を含む):
    3000円×125%×8時間+3000円×150%×2時間
    =3万9000円

    休日労働の残業代:
    3000円×135%×8時間+3000円×160%×2時間
    =4万2000円

    残業代の合計:
    4万5000円+3万9000円+4万2000円
    =12万6000円

4、未払い残業代の請求方法

未払い残業代を請求する手続きには、会社との協議・労働審判・訴訟などがあります。
各手続きについてスムーズに対応して、適切な金額の残業代を得たいと希望されるなら、弁護士に相談することを検討してください。

  1. (1)会社との協議

    未払い残業代の請求は、まず会社との協議を通じて行うのが一般的です。
    会社が任意に残業代の支払いに応じれば、円満に問題を解決することができます。

    残業代の支払義務を会社に認めさせるには、残業の証拠を十分に揃えたうえで、労働契約・労働基準法の根拠に基づく請求を行うことが大切です
    証拠の収集や請求根拠の検討については、弁護士に相談すればサポートを受けられます。

  2. (2)労働審判

    会社との協議がまとまらない場合は、次には労働審判を申し立てましょう。

    労働審判は、裁判所において行われる非公開の手続きです。
    裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、労使双方の主張を公平に聴き取った上で、調停または労働審判により紛争解決を図ります。
    労働審判の審理は原則として3回以内に終結するため、早期解決が期待できる点が大きなメリットとなります。

    労働審判を有利に進めるためには、裁判官と労働審判員に対して、残業代請求に法的な根拠があることを説得的に伝えることが大切です
    また、3回以内の短期間で審理が行われるため、初回の期日までに十分な準備を整えて臨むこともポイントになります。

    弁護士に依頼すれば、残業に関する事実関係や証拠をふまえたうえで、労働審判に向けて適切に準備を整えられます。
    労働審判期日当日の対応についても、弁護士に任せることを検討してください。

  3. (3)訴訟

    労働審判に対して異議が申し立てられた場合は、自動的に訴訟手続きへと移行します。
    また、労働審判の申立てを行わず、直ちに残業代請求訴訟を提起することも可能です。

    訴訟は、裁判所で行われる公開の手続きです。
    残業代請求訴訟は、労働者が原告として残業代請求権の存在を主張・立証して、被告である会社がそれに反論する形で進行します。
    最終的には裁判所が判決を言い渡して、労働者側の残業代請求を認めるか否かの結論を示します。また、訴訟の途中で和解が成立する場合もあります。

    訴訟を通じて未払い残業代を請求する際には、協議や労働審判の場合以上に、証拠に基づく厳密な立証を行うことが重要です
    訴訟の手続き自体も専門性が高く、難しい対応が必要になる場面も多いため、訴訟を提起する場合には弁護士に依頼しましょう。

5、まとめ

残業代を計算する際には、1時間当たりの基礎賃金を求めて、残業の種類ごとに時間数を集計したうえで、労働基準法に基づく割増賃金を適用します。
正確な手順で残業代を計算し、実際の支給額が不足していることが明らかになったら、会社に対して残業代請求を行いましょう。

会社に残業代を請求する際には、弁護士に依頼することをおすすめします
弁護士は、会社との協議・労働審判・訴訟を通じて、依頼者が適正な金額の残業代を回収するためのサポートを行います。

ベリーベスト法律事務所では、残業代請求に関するご相談を承っております。
「会社から支払われた残業代が少ないのではないか…」と感じている方や、残業代の計算方法がわからずに困られている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください

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