うつ病の同僚のしわ寄せで長時間残業が発生したとき、とるべき対応

2024年08月05日
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うつ病の同僚のしわ寄せで長時間残業が発生したとき、とるべき対応

同僚がうつ病で休職することになった場合には、うつ病になった同僚が担当していた仕事を、誰か他の人が引き継ぐことになります。

うつ病の同僚の代わりに人員が補充されればよいですが、そうでない場合には、他の従業員が自分の仕事に加えてうつ病の同僚の仕事も引き継がなければなりません。そうなると、うつ病の同僚の仕事のしわ寄せで、長時間残業を余儀なくされることもあるでしょう。

本コラムでは、うつ病の同僚の仕事のしわ寄せで長時間残業が発生したり過労の状態になったりした場合に労働者がとるべき対応について、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。


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1、うつ病の同僚に接するときに気を付けるべきこと

同僚がうつ病になってしまい、仕事にしわ寄せを受けると、その同僚に対して文句を言いたくなるかもしれません。
しかし、うつ病の人に接するときには、以下のような点に注意する必要があります

  1. (1)過度な特別扱いをしない

    うつ病の治療には、周囲の人の適切な支援や配慮が不可欠です。
    うつ病の同僚が休職する際には、仕事を引き継ぐなどの対応をして、安心して治療に専念できる環境を整えてあげなければなりません。
    しかし、うつ病だからといって、過度に特別扱いをする必要はありません。

    過度に特別扱いをしてしまうと、同僚としてはそれを余計に重荷に感じてしまい、症状が悪化してしまうおそれがあるためです。

  2. (2)励ましたりしない

    病気になった人に対して、「がんばれ「頼りにしているから早く復帰して」などの励ましの言葉をかけることがありますが、うつ病の人にとっては、逆効果になってしまいます。

    うつ病は心の病気であるため、励ましの言葉をかけられたとしても満足に力を発揮することができる訳ではありません。
    むしろ、周囲の期待に応えられないことでショックを受けてしまい、さらにうつ病の症状が悪化してしまうおそれがあります。

  3. (3)批判や非難を行わない

    うつ病により会社を休職することになると、他の従業員にしわ寄せがいったり、業務に支障が生じたりすることがあります。
    しわ寄せを受けた側の社員としてはうつ病の同僚に対して批判や非難を行いたくなるかもしれません。

    しかし、うつ病の人が批判や非難を受けると自己否定的な考えが強くなり、さらにうつ病が悪化してしまうおそれがあるのです。

2、同僚の仕事のしわ寄せが大変な場合は上司や会社に相談

同僚の仕事のしわ寄せのために長時間残業や過労などの負担が生じた場合は、まずは上司や会社に相談するようにしましょう。

  1. (1)会社には安全配慮義務がある

    会社には、労働者が安全で健康に働くことができるように配慮しなければならないようにするという「安全配慮義務」が課されています。

    安全配慮義務は、労働契約書や就業規則に明示されていなかったとしても、労働契約の締結によって当然に生じる義務であり、労働契約法5条に明文化されています。
    そして、長時間労働の改善も、安全配慮義務に含まれているのです。

  2. (2)上司や会社に相談することで労働環境の改善が期待できる

    会社には安全配慮義務がありますので、原則的には、上司や会社に相談することで労働環境を改善するための対応がとられることになります。

    現在の業務量の負担を上司がしっかりと把握することで、他の社員にも仕事を割り振られるなどして、過度な負担が生じないように業務量の調整が行われることが期待できます。
    また、人員不足によりすぐに対応が難しい場合でも、他の部署から人員をまわしたり、休職者の代わりに新規の人材を確保したりするなどの対応が行われる可能性があります。

    自分ひとりで抱え込んでも労働環境が改善することはありませんので、同僚のしわ寄せにより業務に負担を感じるようであれば、抗議の矛先を同僚に向けるのではなく、上司や会社に相談してみることが大切です。
    また、ストレスにより精神的な負担やメンタルヘルスの不調が生じた場合には、精神科医などの産業医を受診することも検討してください。

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3、仕事が増えて長時間労働になった場合に注意すべきこと

うつ病の同僚のしわ寄せにより長時間労働になった場合には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)自分も過労によりうつ病にならないように気を付ける

    会社を休んでいる同僚のしわ寄せのために残業時間が増えて、長時間労働を強いられる状況になっている場合には、ご自身も過労によりうつ病にならないように注意する必要があります。

    たとえば、直近3か月間の時間外労働が1月あたり100時間以上あり、それが原因でうつ病を発症した場合には、労働災害(労災)として認定される可能性があります。
    また、労災の認定基準には該当しない場合であっても、長時間労働により心身の不調をきたす可能性はあります。

    仕事の負担が急増した場合には、早めに会社や上司に相談して、業務量の調整など労働環境の改善を求めていきましょう。

  2. (2)残業が増えると未払い残業代が発生する可能性がある

    同僚が休職したことなどが原因で、急に残業が増えて長時間労働になると、残業代の未払いが生じることがあります。

    毎日のように長時間残業をしていたにもかかわらず、思ったよりも残業代が少ないという場合には、未払いの残業代が発生している可能性がありますので、まずはご自身で残業代の金額を計算してみるとよいでしょう。
    そして、未払いの残業代が発生していた場合には、会社に対して未払い残業代を請求することを検討すべきでしょう
    なお、残業代の請求権には3年という時効があるため、早めに対応することが大切です。

4、未払い残業代を請求する方法

以下では、会社に対して未払い残業代を請求する方法を解説します。

  1. (1)未払い残業代に関する証拠収集

    会社に対して残業代を請求するには、まずは、労働者の側で「未払い残業代が発生している」という事実を証明する必要があります。
    そのためには、未払い残業代に関する証拠が不可欠です。

    残業代の請求に必要になる証拠は具体的な事案によって異なりますが、一般的には、以下のようなものが証拠となります。

    • 労働契約書
    • 就業規則
    • 給与明細
    • タイムカード
    • 業務日報
    • PCのログオン・ログオフ情報
    • 仕事上の通話やメールの履歴


    なお、会社を退職してしまうとこれらの証拠を収集することが困難になるため、退職を予定している場合には、会社に在職している間に証拠を収集しておく必要があります

  2. (2)未払い残業代の計算

    未払い残業代に関する証拠が確保できたら、次は、未払い残業代の具体的な金額を計算しましょう。
    残業代の計算にあたっては、時間外労働、深夜労働、休日労働に分けて、所定の割増率を適用する必要があります。
    また、時間外労働のうち月60時間を超える部分については50%以上の割増率が適用されるため、その点の区別も必要です。

    計算ミスなどがあると本来に請求できる金額よりも少ない金額しかもらえない可能性があるため、正確に計算することが大切です。

  3. (3)会社との交渉

    証拠に基づいて未払い残業代を計算したら、会社に対する請求をはじめましょう。
    まずは、会社との話し合いによって、未払い残業代の金額や支払い方法、支払い時期などを決めていくことになります。

    会社側が話し合いに応じてくれない場合や話し合いが長引いているという場合には、3年という時効に注意する必要が生じるため、内容証明郵便を送付するなどの対応が必要になってきます。

  4. (4)労働審判または裁判

    会社との話し合いでは未払い残業代に関する問題が解決しない場合には、労働審判や裁判などの手続きを利用することになります。
    労働審判であれば、原則として3回までの期日で手続きが終了することになっているため、裁判に比べて迅速な解決が期待できます。
    また、労働関係の審判前には調停による解決が図られますので、事案に即した柔軟な解決が可能になります。
    話し合いによる解決の余地がある場合には、訴訟の前に労働審判を利用するとよいでしょう。

5、会社の労働環境が悪いときには弁護士に相談

同僚の仕事のしわ寄せで長時間残業が発生するという問題や、その他の労働環境に関する問題が生じている場合には、まずは弁護士に相談してください。

  1. (1)会社との交渉により労働環境の改善が期待できる

    労働環境に不満があったとしても、労働者本人からでは、これまでの関係性から、会社に対して不満を伝えにくいこともあるでしょう。
    弁護士に依頼すれば、会社との交渉を代行してもらうことができます

    弁護士が法的観点から現状の問題点を分析して、それを会社に伝えることで、会社も問題点を認識しやすくなるでしょう。

  2. (2)会社への未払い残業代請求を任せることができる

    未払い残業代の請求にあたっては、証拠の収集や未払い残業代の計算など面倒な作業が必要になります。
    また、労働者個人が未払い残業代の請求をしても、会社がまともに対応してくれないことがあります。

    弁護士に残業代の請求を依頼すれば、本人に生じる負担を軽減しながら、労働者としての正当な権利を実現するための適切な対応をとることができます。
    会社との話し合いで解決できない場合には労働審判や裁判などの法的手続きによる解決を図ることになりますが、法的手続きに関する対応も弁護士に任せることが可能です

6、まとめ

同僚がうつ病で休職することになると、仕事のしわ寄せが他の労働者にいくことになります。
業務量の急増により、過度な負担となった場合には、上司や会社に対して改善を求めていくことが大切です。
また、未払いの残業代が発生している場合には、しっかりと支払いを請求しましょう

とくに未払い残業代を請求する際には、法律の専門家である弁護士のサポートを受けることが大切です。
長時間の残業や過労で悩まれている方や、未払い残業代の請求を検討されている方は、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています