高額セミナーの返金や契約取り消しは可能? 法的手続きや対処方法
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東京都のデータによりますと、令和2年度に消費生活総合センターおよび都内の区市町村の消費生活相談窓口に寄せられた相談件数は、13万6635件でした。特に、インターネット通販に関する相談が4万件を超え、過去最高となったほか、SNSが関連する相談も増加傾向にあるようです。
投資や副業などについて、「経験豊富なプロが教える講座」などといった呼び込みでセミナーを開催し、高額のセミナー料金を徴収する業者が増えていますが、中には詐欺的なセミナーやセミナー業者も存在しているため注意が必要です。
支払ってしまった高額なセミナーの受講料を返金してもらったり、契約を取り消したりすることは可能なのでしょうか。今回は、セミナー料金の返金を受けるためのポイントや手続きについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「消費生活をめぐる現状」(東京都))
1、高額なセミナー料金を返金してもらうことは可能?
近年では、投資や副業などに関するセミナーが多く開催されており、SNSを中心として盛んに宣伝されています。しかし、宣伝に惹かれて高額なセミナー料金を支払った後、「やっぱり怪しいのでキャンセルしたい……」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、法律上一定の要件を満たす場合、すでに支払ったセミナー料金の返金を受けられる可能性がありますので、セミナー料金を支払ってしまって後悔している方は、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
2、セミナー料金の返金を受けるためのポイント
セミナー料金の返金を受けるためには、以下のポイントに注意して対応することが大切です。
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(1)セミナー主催者とのやり取りを保存する
セミナー料金の返金を受けられるかどうかは、セミナー事務局などとの間で行われた、勧誘時や契約締結時のやり取りによって判断されるケースが多いです。
特に、詐欺的な勧誘が行われた場合や、契約締結時に不正確な説明が行われた場合などには、返金を受けられる可能性が高まります。
したがって、セミナー料金の返金を受けるためには、セミナー事務局など関係者とのやり取りをできる限り保存しておくことが重要です。メールやSNSのメッセージ、電話でのやり取りについても録音するなどして、どのようなやり取りが行われたかを記録化しておきましょう。 -
(2)複数の法的手段を検討する
法律上、セミナー料金の返金を受けるための方法は複数存在するので、ある方法では返金を受けられなくても、別の方法によって返金を受けられるケースも存在します。
そのため、複数の法的手段を網羅的に検討することが、セミナー料金の返金を受けるための重要なポイントです。
返金を求めるためにどのような方法が考えられるかについては、次の章で詳しく解説します。
3、セミナー料金を返金してもらうための法的手続き
セミナー料金の返金を受けるための法的手続きとしては、主に以下の例が挙げられます。
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(1)特定商取引法に基づくクーリングオフ
事業者と消費者が締結した契約のうち、一定の類型に該当するものについては、特定商取引法によりクーリングオフが認められています。
クーリングオフをすると、消費者は手数料や違約金、損害賠償などを一切負担することなく、事業者との契約を解除でき、契約の解除に伴い、支払った料金等の返金を受けることが可能です。
クーリングオフが認められている主な契約の類型と、各クーリングオフ期間は以下のとおりです。① 訪問販売(キャッチセールスを含む)
→契約締結書面の受領日から起算して8日間
② 電話勧誘販売
→契約締結書面の受領日から起算して8日間
③ 特定継続的役務提供
※エステ、語学教育、学習塾等、家庭教師等、パソコン教室等、結婚相談所
→契約締結書面の受領日から起算して8日間
④ 個別信用購入あっせん
※商品・サービス代金の分割払いに関するクレジット契約
→契約締結書面の受領日から起算して8日間
⑤ 投資顧問契約
※投資判断に関する助言契約
→契約締結書面の受領日から起算して10日間
⑥ 現物まがい商法
※販売した商品の現物を渡さず、預かり証だけを交付する取引
→契約締結書面の受領日から起算して14日間
⑦ 連鎖販売取引(マルチ商法)
→契約締結書面の受領日から起算して20日間(将来に向けての解除は、期間経過後でもOK)
⑧ 業務提供誘引販売取引
※報酬の発生する仕事をあっせんする条件として、商品やサービスを購入させる取引
→契約締結書面の受領日から起算して20日間
セミナー参加に関する契約が、上記いずれかの取引等に該当する場合には、期間内に限りクーリングオフが認められます。
なお、クーリングオフを行う場合、クーリングオフ期間中に事業者への通知を発送する必要があります(期間中に到達する必要はありません)。通知を発送する際には、郵便を出した内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明する「内容証明郵便」を利用するのがおすすめです。 -
(2)消費者契約法に基づく契約取消し
クーリングオフによる契約の解除が認められなくても、事業者によって以下の行為がなされた場合には、消費者契約法に基づく契約取消しが認められます(同法第4条第1項~第4項)。
- ① 重要事項の不実告知
- ② 不確実な事項に関する断定的判断の提供
- ③ 不利益事実の不告知
- ④ 消費者の要求に反する不退去
- ⑤ 退去しようとする消費者の妨害
- ⑥ 過量契約
- ⑦ 消費者の不安を煽る告知
- ⑧ デート商法
- ⑨ 判断力の低下の不当な利用
- ⑩ 霊感商法
- ⑪ 契約締結前にサービスを提供する行為
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(3)錯誤に基づく契約取消し
契約に基づく取引について錯誤(勘違い)が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであった場合は、錯誤に基づく契約取消しが認められることがあります(民法第95条)。
なお錯誤取消しは、契約締結の動機について錯誤があった場合にも、その動機が相手方に対して表示されていれば認められる余地があります(同条第2項)。
たとえば、「有名な投資の成功者の講義が受けられると聞いたので、セミナーに参加します」と相手方に伝えていたケースで、その「有名な投資の成功者」が講師として参加しない場合には、錯誤取消しが認められる可能性が高いです。 -
(4)詐欺に基づく契約取消し
相手方に騙された状態で締結した契約は、詐欺に基づく取消しが認められます(民法第96条第1項)。
ただし、「騙された」ことを立証することは決して簡単ではありません。そこで、詐欺取消しができる場合は、消費者契約法に基づく取消しができる場合と重なることが多いため、契約取消しを行う際には、両方の法律構成を主張するのがよいでしょう。 -
(5)振り込め詐欺救済法に基づく救済制度
セミナーが開催されると告知があり、参加料金を振り込んだものの、セミナーが一向に開催されないといった場合などには、振り込め詐欺救済法に基づく救済制度を利用できる可能性があります。
救済制度を利用するには、セミナー主催者の口座がある金融機関に、詐欺行為が行われている疑いがあるなど、口座が犯罪利用されている旨を申告します。その後、金融機関の判断によって口座が凍結され、最終的に、セミナー主催医者の口座残高から被害者に「被害回復分配金」が支払われます。
被害回復分配金の分配を受けるには、残高が残っているうちに口座を凍結しなければならないので、早めに申告を行いましょう。
(参考:「振り込め詐欺救済法」(預金保険機構))
4、高額セミナーに関する被害の相談先
詐欺的な勧誘に騙されて、高額セミナーの料金を支払ってしまった場合には、以下の窓口へ速やかに相談することをおすすめします。
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(1)消費者ホットライン・消費生活センター
消費者被害については、消費者庁が全国共通の「消費者ホットライン(188)」を設けています。消費者ホットラインに電話をかけると、近隣の消費生活センターの窓口に繋がり、被害状況や解決策について相談することができます。
また、消費生活センターは全国各地に設けられており、最寄りのセンターへ足を運んで相談することも可能です。消費者ホットラインや、消費生活センターへの相談は無料で利用できるため、高額セミナーに関する被害にお悩みの方は、一度相談してみるとよいでしょう。 -
(2)弁護士
セミナー業者に対して料金の返金を求める場合は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は依頼者の代理人として、セミナー業者に対して直接返金を求めます。
その際、綿密な検討に基づく法的な主張を行い、スムーズに返金がなされるように尽力いたします。訴訟などの法的手続きに発展した際にも、弁護士にお任せいただければ安心です。
1日も早くセミナー料金の返金を受け、解決したい場合は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
支払ってしまった高額セミナーの受講料は、クーリングオフや契約取消しによる返金を受けられる可能性があります。返金の可能性を高めるためにも、弁護士のサポートを受けながら複数の法的手段を検討しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、消費者トラブルに関する法律相談を随時受け付けております。ご相談内容に応じて、よりよい解決が得られるように事務所全体でサポートいたします。
セミナー受講料を支払ったものの、返金を求めたい方は、お早めにベリーベスト法律事務所 池袋オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています