タワマン住まいの夫婦が離婚するときの注意点! 財産分与の考え方
- 財産分与
- タワマン
- 離婚
令和2年(2020年)における東京都豊島区の婚姻件数は1963件、離婚件数は414件でした。
婚姻中にタワーマンション、いわゆるタワマンを購入した場合、財産分与の問題が離婚の際のネックになることがあります。
財産分与に関する問題点を乗り越え、円滑に離婚を成立させるためには、弁護士へのご相談をおすすめします。今回は、タワマン住まいの夫婦が離婚する際の注意点や、財産分与の問題について、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
出典:「東京都の婚姻件数と離婚件数(平成25年~令和2年)」(豊島区)
1、離婚時には高額資産の財産分与が問題になりやすい
離婚をする際に、大きなもめ事になりやすいのが「財産分与」です。
特に、婚姻中にタワマンのような高額の資産を取得した場合には、財産分与に関してトラブルになる可能性が高くなります。
-
(1)財産分与とは
夫婦の共有財産を公平に分けることを「財産分与」といいます(民法第768条、第771条)。
夫婦といえども、それぞれが所有する財産は各自のものです。
その一方で、夫婦は協力して生活を送っているため、婚姻中に取得した資産は夫婦の協力によって得たものとされています。
たとえば、一方が専業主婦(主夫)で仕事と家事の比重が偏っており、婚姻中に取得した資産の名義は、どちらかの名義に偏っているというケースもあるでしょう。
このような場合でも、離婚時には婚姻中に取得した資産の財産分与を行い、夫婦間の経済的な公平を図ることになります。 -
(2)財産分与の対象|タワマンは財産分与に含まれる?
財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。
いずれかが婚姻中に取得した資産は、たとえ単独名義であっても、原則として夫婦の共有財産と推定されます(民法第762条第2項)。
ただし、親族からの生前贈与、遺贈、相続など、夫婦の一方が単独で取得した資産については、財産分与の対象外です(特有財産 同条第1項)。
また、夫婦の一方が婚姻前から所有する資産についても特有財産にあたるため、財産分与の対象外となります。
上記のルールに従うと、タワマンが財産分与の対象となるかどうかは、以下の要領で決まります。- 婚姻前に独力でタワマンを取得していた場合
タワマンは財産分与の対象外である特有財産となり、取得者の名義のままです。 - 婚姻中に、親族からの生前贈与・遺贈・相続などによってタワマンを取得した場合または生前贈与・遺贈・相続などによって得た資金を使ってタワマンを購入した場合
タワマンは財産分与の対象外である特有財産となり、取得者の名義のままになります。 - 婚姻中に、家計の中から資金をねん出して売買などによってタワマンを取得した場合
タワマンは財産分与の対象です。 - 婚姻中に、一部を親族からの援助によって、残る一部を家計からの支出によってタワマンを取得した場合
親族からの援助と家計からの支出の割合に従い、親族からの援助に応じた割合が財産分与の対象外に、家計からの支出に応じた割合が財産分与の対象になります。
- 婚姻前に独力でタワマンを取得していた場合
-
(3)財産分与割合に関する基本的な考え方
財産分与の方法や割合は、夫婦間で話し合い、自由に決められます。
しかし、財産分与の話し合いがまとまらない場合もあります。その場合、家庭裁判所の判断(審判・訴訟)によって財産分与割合を決定します。
審判・訴訟では、財産分与割合は半々とされるケースが多いです。
ただし、夫婦のいずれか一方が資産形成に大きく貢献したと判断された場合、財産分与の割合がどちらかに偏る可能性もあります。
2、タワマン(不動産)を所有する夫婦が離婚する際の問題点
タワマンは高額資産のため、タワマンを所有する夫婦が離婚する場合には、財産分与が大きな問題となり、難しい検討・対応を迫られるケースも少なくありません
-
(1)どちらがタワマンに住み続けるかで揉めやすい
離婚後は、どちらかがマンションを退去するか、それとも第三者に売却するかを決めなければいけません。
どちらかが退去するケースで、お互いが家に対して思い入れを強く持っている場合には、どちらがこのまま住み続けるかで揉める可能性があります。
特に、子どもがいるケースでは、問題が複雑化することがあるので注意が必要です。
たとえば、タワマンを購入した側と親権者が別の場合、タワマンを購入した側は「自分の資産だから渡したくない」と主張する一方で、親権者は「子どもの生活環境を変えたくない」と主張し、どちらも住み続けたいと希望することがあります。
このように、折り合い点がみつけにくいケースでは、当事者同士のみでの話し合いでは平行線をたどってしまう可能性が高いでしょう。 -
(2)住宅ローンとの関係で名義変更の問題が発生する
財産分与によってタワマンの名義を変更する場合、住宅ローン契約への抵触に注意しなければなりません。
住宅ローンの返済中に所有者の名義を変更するには、住宅ローン契約に基づき、債権者である金融機関の承諾が必要です。
仮に名義変更が認められたとしても、新所有者は新たな債務者として住宅ローンを返済することが求められます。
つまり、タワマンの名義変更および債務者の変更を金融機関に承諾してもらえるのは、基本的に新所有者が旧所有者と同等以上の返済能力を有するケースに限られます。
たとえば、タワマンを夫から妻へ財産分与するケースで、夫よりも妻の年収が多い場合は名義を変更できる可能性は高いでしょう。
しかし、妻の年収が夫よりも低い場合は、銀行の承諾を得られない可能性が高いので、注意が必要です。 -
(3)ほかに財産がなければ、タワマンを売らなければならない
タワマンの資産価値は、数千万円から1億円以上に及ぶことも少なくありません。
そのため、財産分与の対象となる総資産の価値に対して、タワマンの資産価値が大半を占めているケースがよくあります。
もし、タワマン以外に十分な資産がない場合、公平な財産分与を実現するために、タワマンを売却して金銭を分けるしかありません。
タワマンを売却したくないと考えたとしても、財産分与に伴い売却せざるを得ないことがあることを、念頭に置いておきましょう。
3、財産分与の方法
では、財産分与はどのように決めればよいのでしょうか。
-
(1)夫婦間の協議で決める
まずは離婚協議の中で、他の離婚条件と併せて財産分与の方法を話し合います。
この場合、夫婦の生活の事情などに合わせ、自由に財産分与の方法を決めて問題ありません。ただし、上に述べましたとおり、住宅ローンの債務者の変更については金融機関の承諾が必要であるため、注意が必要です。
財産分与を含むすべての離婚条件について合意できたら、その内容を離婚協議書にまとめて締結します。
法的効力を確実にし、不履行時の強制執行をスムーズにする観点から、公正証書を作成することをおすすめします。 -
(2)離婚調停で決める
離婚協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てます。
離婚調停では、調停委員の仲介の下、財産分与を含む離婚条件について夫婦間で引き続き話し合います。
裁判官が提示する調停案に夫婦双方が同意すれば調停は成立し、調停調書の記載に従って財産分与が行われます。 -
(3)離婚訴訟で決める
離婚調停が不成立となった場合、財産分与の条件を決めて、離婚を成立させるためには離婚訴訟を提起することになります。
ただし、離婚訴訟にて離婚を認めてもらうためには、相手の不貞行為(不倫)、暴力、悪意の遺棄、または長期間の別居などの法定離婚事由をみたす事情が存在することが必要です。
また、離婚訴訟のなかで財産分与についても審理を行いたい場合は、附帯処分等の申し立てる必要があります。
離婚を認める判決が確定すれば、確定した判決の内容に従って財産分与を行うことになります。 -
(4)離婚後に決める
離婚協議・離婚調停で財産分与の合意が得られない場合には、いったん先に離婚を成立させて、後から財産分与を請求することも可能です。
離婚後に財産分与を請求する場合、まずは協議や調停を通じて、元夫婦間で財産分与の方法を話し合います。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の審判により、財産分与の方法が決まります。
なお、財産分与に関する調停・審判は、離婚時から2年を経過すると申し立てられなくなるので注意してください(民法第768条第2項)。
4、離婚を考えている場合は弁護士にご相談を
夫婦が離婚をする際には、財産分与に加えて慰謝料や婚姻費用、親権、養育費など、揉めやすい論点がたくさんあります。
これらの離婚条件についてバランスよく交渉し、できる限り有利な条件で離婚を成立させるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、法的な相場観を踏まえつつ、相手方とのやり取りを通じて適切な落としどころを探り、有利な解決を目指します。
また、協議、調停、訴訟など、離婚をする際の手続きをすべて弁護士に一任することで、心理的な負担は大きく軽減されるでしょう。
配偶者との離婚をご検討中の方は、弁護士へ相談されることをおすすめします。
5、まとめ
タワマンに住んでいる夫婦が離婚する場合、財産分与に関してトラブルになりやすい傾向があります。
財産分与に関する問題点を乗り越え、円滑に離婚を成立させるには、弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関する法律相談を随時受け付けております。
財産分与・慰謝料・親権など、離婚に関するトラブルにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 池袋オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|