「お金にだらしない」は離婚理由になる? 離婚する際のポイント

2023年08月01日
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「お金にだらしない」は離婚理由になる? 離婚する際のポイント

配偶者がお金にだらしないと生活が苦しくなり、将来も不安に感じるでしょう。お金にだらしないことが原因で頻繁に夫婦げんかが起きているような状況では、離婚を考える方もいるかもしれません。

しかし、「お金にだらしない」という理由が裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」にあたるかどうかは、具体的な状況によって異なります。

本コラムでは、「お金にだらしない」という理由で離婚をする方法や離婚する際のポイントについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。

1、「お金にだらしない」は離婚理由として認められる?

以下では、「お金にだらしない」ということが、夫婦が離婚する理由になるのかどうかについて解説します。

  1. (1)「お金にだらしない」は離婚理由になるのか?

    夫婦が離婚する方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の三種類があります。

    協議離婚と調停離婚は、夫婦の話し合いによって離婚をする方法ですので、双方が納得できれば、どのような理由であっても離婚できます。
    そのため、「お金にだらしない」という理由であっても、配偶者が離婚に同意しているのであれば離婚は可能です。

    他方で、裁判離婚では、民法が定める法定離婚事由がなければ離婚をすることができません。「お金にだらしない」という理由だけでは裁判離婚が認められない可能性もある点に注意してください。

  2. (2)離婚の際に話し合うべき事項

    夫婦が離婚する際には、離婚するかどうかだけでなく、以下のような「離婚条件」についても話し合う必要があります。

    ① 親権
    親権とは、未成年の子どもを監護養育したり、子どもに代わって財産の管理や法律行為をしたりする権利または義務のことをいいます。
    夫婦に子どもがいる場合には、離婚時に父または母のいずれか一方を親権者に指定しなければなりません。

    ② 養育費
    離婚後子どもと一緒に生活する親(監護親)は、離れて暮らす親(非監護親)に対して、養育費を請求することができます。
    養育費の金額は話し合いで決めることになりますが、裁判所が公表している養育費算定表を利用すればスムーズに取り決めることができます。

    ③ 慰謝料
    不貞行為やDVなど配偶者に離婚に至る原因がある場合には、慰謝料を請求することができます。
    ただし、慰謝料を請求するためには、慰謝料を請求する側で配偶者の有責性を証拠により立証しなければなりません

    ④ 財産分与
    婚姻期間中に夫婦が協力して維持・形成した財産については、財産分与によって清算することができます。
    財産分与の割合は基本的には2分の1であり、妻が専業主婦である場合にも変わりません。

    ⑤ 面会交流
    離婚後に離れて暮らす親は、面会交流によって、定期的に子どもと交流することができます。
    子どもとの面会を希望する場合には、将来のトラブルを防止するためにもできるかぎり明確な内容で面会交流の取り決めをしておくとよいでしょう。

2、法定離婚事由|お金にだらしない相手と離婚できる可能性があるケース

相手が離婚に同意してくれない場合には、法定離婚事由がなければ、裁判離婚することができません。

  1. (1)法定離婚事由とは

    法定離婚事由とは、民法770条によって定められた裁判で離婚する際に必要となる理由をいいます。
    原則として、裁判で離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由が存在しなければなりません

    具体的には、以下の五つの理由が法定離婚事由として定められています。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 回復の見込みのない強度の精神病
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由
  2. (2)「お金にだらしない」を理由に離婚できるケース

    「お金にだらしない」という理由だけでは、上記の法定離婚事由には直接は該当しません。しかし、配偶者がお金にだらしないことで以下のような事情がある場合には、法定離婚事由に該当する可能性があります。

    ① 生活費を支払わない
    夫婦には、法律上互いに協力し、扶助する義務があります(民法752条)。
    正当な理由な、協力扶助義務を果たさなかった場合には、法定離婚事由である「悪意の遺棄」にあたる可能性があります。
    配偶者が十分な稼ぎがあるにもかかわらず、生活費などのお金を支払わないことで生活が困窮する事態になった場合には、悪意の遺棄に該当し、離婚が認められる可能性があります

    ② 生活が困窮するほどの浪費を繰り返す
    配偶者が自分の趣味などにお金をつぎこんでしまうことから、生活が困窮してしまう場合もあります。
    生活が困窮するほど浪費を繰り返すことは、夫婦の協力扶助義務に反する事態といえます。そのため、このようなケースも「悪意の遺棄」に該当して、離婚が認められる可能性があるのです。

    ③ 生活に関係のないことを理由に多額の借金をする
    多額の借金があったとしても、住宅ローン、自動車ローン、教育ローンなど生活に必要な借金であれば、離婚の理由にはなりません。
    しかし、娯楽やギャンブル、キャバクラに風俗など生活に関係のない理由でした借金のために家計が圧迫される事態になれば、正常な夫婦生活を送ることは困難な状況となります
    このように生活に関係のないことを理由に多額の借金をしているケースでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当して、離婚が認められる可能性があります。

3、お金のことを理由に離婚する際のポイント

お金にだらしない相手と離婚をする際には、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. (1)証拠を集める

    お金にだらしない相手と離婚をするためには、まずは法定離婚事由を基礎づける証拠を収集することが大切です。
    相手が離婚に同意してくれればいいですが、そうでない場合には法定離婚事由がなければ離婚をすることができません。
    スムーズに離婚手続きを進めるためにも、離婚を切り出す前に十分な証拠を集めておきましょう

    具体的には、以下のような証拠を収集してください。

    • 生活費が支払われていないことがわかる通帳、家計簿
    • 浪費の事実がわかるクレジットカードの利用明細、領収書
    • 借金の有無、金額がわかる契約書、明細書
    • 収入金額がわかる給与明細、源泉徴収票
  2. (2)別居をする/婚姻費用を請求する

    一緒に生活している状況では離婚の話し合いが難しいという場合には、離婚前に別居するのも有効な手段となります。
    また、別居をしても離婚するまでは夫婦であることに変わりありませんので、別居中の生活費として婚姻費用を請求することもできるのです。

    婚姻費用の金額などについては、夫婦の話し合いによって決めていくことになります。
    裁判所が公表している婚姻費用算定表を使えば、簡単に婚姻費用の相場を把握することができるので、それを参考にしつつ夫婦間の具体的な事情も考慮しながら金額を決めましょう。

  3. (3)協議での離婚成立を目指す

    「お金にだらしない」という理由では、裁判離婚ができない可能性は残ります。また、裁判離婚まで発展すると離婚が成立するまでに長い期間がかかってしまいます。
    そのため、離婚を決意した場合には、できるかぎり協議での離婚成立を目指すほうがよいといえます。

    協議での離婚を成立させるポイントとしては、ある程度離婚条件について譲歩するということが挙げられます
    希望する条件での離婚に固執していると、いつまでたっても離婚を成立させることができません。
    譲れない条件と譲ることができる条件をより分けたうえで、譲ることができる条件については柔軟に譲歩の姿勢を示すことで、離婚の合意に至る可能性も高くなるでしょう。

4、離婚について弁護士に相談するべき理由

離婚をするかどうか迷っている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)離婚交渉を任せることができる

    離婚の話し合いは、当事者同士で行うのが基本になります。
    しかし、当事者同士の話し合いをしても、言い争いになってしまったり、感情的な物言いになってしまったりすることから、本題である離婚や離婚条件についての話し合いを進めることができないことがあります。

    弁護士に依頼すれば、本人に代わって離婚の話し合いを担当させることができるため、冷静かつスムーズな話し合いを進めることができます
    また、本人が直接に相手と会って話をする必要もなくなるため、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。

  2. (2)法的に離婚が正当であることを証明しやすくなる

    「お金にだらしない」という理由で離婚することができるかどうかは、法定離婚事由に該当する事情が存在するかどうかで異なります。

    法定離婚事由の有無を判断するためには、法律の専門知識が必要になります。
    弁護士に相談をすれば、法定離婚事由の有無を判断したうえで、離婚に向けた具体的な方針を立てることができます

  3. (3)調停や訴訟へもスムーズに進めることができる

    夫婦で協議しても離婚の合意が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てたり訴訟を提起したりすることが必要になります。

    協議の時点から弁護士に相談・依頼をしていれば、調停や裁判に発展した場合にも、引き続き担当してもらうことができます
    事情をよく知っている弁護士に担当してもらうことができれば、調停や裁判になっても安心して任せることができるでしょう。

  4. (4)財産分与や慰謝料など金銭的な取り決めをきっちりとできる

    離婚時には、財産分与や慰謝料などの金銭的な取り決めをする必要があります。
    これらの取り決めをする際には、財産分与の対象となる財産の選定や評価、慰謝料金額の相場などを押さえたうえで話し合いを進めていく必要があります。

    弁護士に依頼すれば、豊富な知識や経験に基づきながら、財産分与や慰謝料が問題となる事案であっても適切な内容で取り決めをすることができます
    また、合意が成立した場合にも、将来の履行を確実にするための公正証書の作成などについても弁護士のサポートを受けることができます。

5、まとめ

「配偶者がお金にだらしない」というだけでは法定離婚事由には該当しませんが、お金にだらしない配偶者が生活費を支払わなかったり、多額の浪費や借金によって家計を圧迫していたりするなどの事情がある場合には、法定離婚事由に該当する可能性があります。

配偶者の浪費や金銭問題が原因で離婚を検討されている場合、法定離婚事由の有無を確認したうえで適切に対応していくため、弁護士に相談しましょう
まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています