不貞行為を相手の会社に報告したらどうなる? リスクを解説
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配偶者による不倫が発覚したとき、配偶者および不倫相手に対して慰謝料を請求するだけでは満足できず、なんらかの社会的制裁を与えたいと考える方は多くいます。
そして、「不倫相手の会社に不倫の事実を報告する」という手段を選択する方も多くおられるのです。しかし、そのような行為には、脅迫罪に問われたり損害賠償を請求されたりするなどの、さまざまなリスクが存在しているのです。
本コラムでは、不倫相手の会社に不貞行為を報告するという行為のリスクや注意点について、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。
1、会社に不貞行為を報告することは法的に問題か
まず、不倫相手の会社に対して不貞行為を報告することの法律的な問題を解説します。
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(1)不倫相手の会社に不貞行為を報告するのは避けるべき
配偶者による不貞行為が発覚したら、配偶者だけでなく配偶者と不倫関係にあった相手に対しても強い怒りや嫌悪感を抱くことでしょう。
そして、「自分が不貞行為による精神的苦痛を被っているにもかかわらず、不倫相手が何の制裁も受けずに普通に生活をしていることが許せない」という感情から、不倫相手に対して、なんらかの制裁を加えるために行動を起こす方もいるのです。
しかし、不倫相手の会社に不貞行為の事実を報告する行為には脅迫罪に問われたり損害賠償を請求されたりするリスクが存在するため、避ける方がよいといえます。
また、不貞行為の事実を報告すれば、会社からなんらかの処分を受けることを期待する方もいますが、不貞行為は業務とは関係のない私的行為ですので、それを理由として会社内で処分を受ける可能性は低いでしょう。
社内不倫であれば、懲戒処分や異動などの処分を受ける可能性もありますが、それも確実とはいえません。 -
(2)不倫相手の会社に不貞行為を報告した場合のリスク
不倫相手の会社に不貞行為を報告した場合には、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
- ① 脅迫罪や名誉毀損罪で処罰されるリスク
不倫相手に対して、「退職しなければ不貞行為の事実を会社に報告する」といったことを伝えた場合、脅迫罪に該当する可能性があります(刑法222条)。
また、たとえ不貞行為が事実であったとしても、不倫相手の職場に不貞行為の事実を告げて、そのうわさを広めてしまうと、名誉毀損罪に該当する可能性があるのです(刑法230条)。
- ② 不倫相手から損害賠償請求を受けるリスク
不貞行為の事実を会社に報告すると、不倫相手から損害賠償請求をされる可能性があります。
本来、不倫された側は配偶者や不倫相手に対して慰謝料の請求をすることができるはずが、反対に慰謝料を請求されて金銭的な負担が生じてしまう可能性もあるのです。
- ③ 慰謝料の回収が困難になるリスク
不倫相手の会社に不貞行為の事実を報告した場合、会社に居づらくなった不倫相手が会社を辞めてしまう可能性があります。
相手が会社を辞めて収入がなくなってしまうと、その後に慰謝料請求をしたとしても、支払ってもらうことが難しくなるおそれがあるでしょう。
- ① 脅迫罪や名誉毀損罪で処罰されるリスク
2、不倫をした配偶者や不倫相手に対して取れる対応
以下では、配偶者や不倫相手に対して取れる対応を解説します。
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(1)配偶者との離婚
配偶者が不貞行為をしていた場合には、配偶者と離婚をすることによって、不倫をした配偶者に対して社会的制裁を与えることができます。
不倫をした配偶者が離婚を拒否していたとしても、不貞行為は法定離婚事由とされるため、裁判離婚の手続きによって離婚をすることが可能です。
また、不倫をした配偶者が離婚を希望しても、不倫をした側は有責配偶者として扱われるため、離婚請求は原則として認められません。
このように、離婚にあたっては、不倫された側の配偶者が有利な立場で手続きを進めていくことができます。 -
(2)配偶者および不倫相手への慰謝料請求
配偶者が不貞行為をしていた場合には、配偶者と不倫相手の双方に対して、慰謝料を請求することができます。
不貞行為は、法律上は共同不法行為として扱われますので、配偶者と不倫相手の双方に対して、全額の慰謝料を請求することができます。
ただし、受け取ることができる慰謝料の総額は変わらないため、2人に対して請求することができるといっても、2倍の慰謝料を受け取ることができるというわけではありません。
たとえば、適正な慰謝料が200万円だった場合には、不倫をされた妻は、夫と不倫相手の双方に対して200万円を請求することができます。
しかし、不倫相手から200万円の支払いを受けた場合には、夫からは不倫の慰謝料をもらうことはできないのです。
3、慰謝料請求をする場合の流れと注意点
以下では、不貞行為を理由として不倫相手に対して、慰謝料請求をする場合の流れと注意点について説明します。
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(1)不貞行為の証拠収集
配偶者が不貞行為をしている疑いが生じた場合には、すぐに配偶者に問いただすのではなく、まずは配偶者が不貞行為をしているという証拠を収集しましょう。
証拠がない段階で焦って配偶者に問いただしてしまうと、不貞行為を否定されるだけでなく、証拠が隠滅されてしまうおそれがあるため慎重な対応が必要です。
「不貞行為」とは、配偶者以外の異性との間で肉体関係を持つことをいいます。
不貞行為の直接の証拠としては、配偶者と不倫相手が肉体関係に及んでいる場面の写真や動画になります。しかし、このような証拠が残っていることは例外的であるため、通常は、不貞行為の存在を推認させる状況証拠を集めるという方法で証拠収集を行うことになります。
具体的には、以下のような証拠を収集しましょう。- 配偶者が不倫相手とホテルに入っていく写真や動画
- ホテルの宿泊料金の領収証
- 不倫相手とのLINE、メール
- 配偶者が不倫相手と親密な様子で写っている写真や動画
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(2)不倫相手の住所の調査
不倫相手に対して慰謝料請求をする場合には書面を送付することになるため、不倫相手の住所を把握する必要はあります。
探偵に依頼して不倫相手の住所を調べてもらうことも選択肢となりますが、不倫相手の連絡先などがわかっているようであれば弁護士に依頼をすれば、弁護士会照会という方法によって電話番や住所を調べることも可能です。 -
(3)不倫相手に対して内容証明郵便で慰謝料請求の書面の送付
不倫相手の住所がわかったら、当該住所宛てに内容証明郵便を利用して、慰謝料請求を求める書面を送付しましょう。
内容証明郵便は、「いつ、どのような内容の書面を送ったのか」を証明することができる手段であるため、後日に裁判になった場合にも「慰謝料を請求した」という事実を示す証拠として提出することができます。 -
(4)話し合いによる交渉
不倫相手が内容証明郵便を受け取った後は、不倫相手と交渉を行っていきましょう。
不倫相手が不貞行為を認めている場合には、慰謝料の金額や支払い方法について話し合いを行い、合意ができた場合には、合意書を作成してその内容を残しておいてください。
慰謝料の支払いは、できる限り一括払いにするのが望ましいですが、不倫相手の資力によっては分割払いも検討する必要があります。
その場合には、将来の未払いのリスクを減らすためにも、頭金としてまとまったお金を入れてもらうなどの工夫をするとよいでしょう。 -
(5)裁判
不倫相手が不貞行為を認めない、または慰謝料の金額などで合意が得られないという場合には、最終的に裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することになります。
裁判では、慰謝料を請求する側において不倫相手が不貞行為をしたことを主張立証していかなければなりません。
どのような証拠があれば不貞行為を立証することができるのかについては、具体的な事案によって異なってきますので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
4、夫や不倫相手への慰謝料請求は弁護士に相談を
夫や不倫相手に対して慰謝料を請求することを検討されている方は、弁護士に相談をすることを検討してください。
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(1)適切な手段を取れる
配偶者による不貞行為が判明すると、どうしても感情的になってしまい、相手に対して制裁を与えるために不適切な手段を取ってしまう可能性もあます。
しかし、感情的になって制裁を与えようとしても、逆に相手から訴えられるなどのリスクがあるため、慎重に行動することが大切です。
一人では冷静に対応することが難しいこともありますので、配偶者による不貞行為が判明した場合には、まずは弁護士に相談してください。
弁護士であれば、客観的立場から状況を整理して、適切かつ妥当な制裁方法をアドバイスすることができます。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
不倫慰謝料を請求することになった場合には、相手との交渉が不可欠となります。
しかし、不倫をした当事者と顔を合わせて話し合いをしなうことは、精神的に大きな負担になるでしょう。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉をすべて任せることができます。
また、慰謝料を請求する際にも、相場となる慰謝料額を把握した上で交渉を進めることによって、スムーズに話し合いを進めることが可能になります。 -
(3)適切な離婚条件で離婚ができる
不貞行為をした配偶者と離婚をする場合には、慰謝料以外にも財産分与や養育費などの離婚条件を取り決めなければなりません。
離婚をすることになれば少なからずその後の生活面で不安が生じることになりますので、できる限り有利な条件で離婚をすることが大切です。
弁護士であれば、交渉だけでなく調停や裁判といった法的手段を取ることによって、より適切な離婚条件での離婚に導くことができます。
5、まとめ
配偶者による不貞行為が発覚しても、そのことを不倫相手の会社に報告するとさまざまなリスクが生じますので、そのような行動は控えてください。
配偶者や不倫相手に対しては、離婚や慰謝料請求といった方法によって対応しましょう。
不貞行為による慰謝料請求や離婚を検討されている方は、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスまで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています