夫が他の女とワンナイト…。一度の不貞行為で慰謝料は請求できる?

2023年05月30日
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夫が他の女とワンナイト…。一度の不貞行為で慰謝料は請求できる?

池袋はラブホテルが多いことでも有名であり、夜になると多くのカップルが腕を組んで歩いている姿を見かけます。

もし、夫がラブホテルなどで他の女性と一夜を過ごした(ワンナイト)ら、たとえ一度だけの行為であったとしても、妻としては「裏切られた」という思いを抱くものでしょう。家族や友人からは「男なのだから一度の過ちくらいは仕方がない」「一度だけなら許してあげなさい」と言われたとしても、貞節を誓いあった関係であるのに裏切られた以上は、離婚を決意する女性もいるはずです。

本コラムでは、「夫が他の女性と一夜を過ごした」という理由で離婚や慰謝料請求をすることができるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、ワンナイトでも慰謝料の請求は可能?

まず、夫が他の女性と一夜を過ごしたときに、夫や相手の女性に対して慰謝料を請求することができるのか否かについて解説します。

  1. (1)ワンナイトであっても慰謝料請求は可能

    法律上、配偶者が不貞行為をした場合には、配偶者や不貞行為を行った相手に対して慰謝料を請求することができます。

    不貞行為とは、配偶者以外の異性との間で性的な関係を持つことをいいます。
    そして、配偶者が一度でも他の異性とセックスしたなら、その時点で不貞行為が存在することになるため、法的に、慰謝料を請求できる可能性が高いです

    ただし、慰謝料の金額は不貞行為の回数に影響されるため、夫と他の女性が長期間にわたって継続的に不貞行為を繰り返した場合に比べると、請求できる慰謝料の金額は低くなります。

  2. (2)慰謝料請求が難しいケースとは?

    法的には、ワンナイトの場合であっても、夫や他の女性に対して慰謝料を請求することができます。
    しかし、実際には、ワンナイトの事例では継続的な不倫と比べて慰謝料請求が難しい場合があるのです

    ① 証拠が乏しい
    夫が他の女性と一夜を過ごしたことが後から発覚したとしても、すでに終わったことであるため、不貞行為がなされたことを証明する証拠を入手することは難しい場合が多いです。

    夫がワンナイトの事実を否定していて、ほかに証拠もないような場合には、不貞行為を裏付けることができず、不倫慰謝料を請求することができない可能性が高いです

    ② 不倫相手が既婚者だと認識していない
    夫が不倫をした場合には、夫だけではなく不倫相手に対しても慰謝料を請求することができます。

    ただし、不倫相手に対して慰謝料を請求するためには、「不倫相手が配偶者のことを既婚者であると知っていた」または「容易に知ることができる状況であった」という事情が必要になります。

    ワンナイトの不倫の場合、「飲食店やイベントで出会った初対面の相手と意気投合して、ラブホテルまで行った」といったように、互いに面識のない者同士で性的関係を持つことが多いため、相手が既婚男性であることを認識していないことがあります。

    このような場合には、たとえワンナイトがあったこと自体は証明できたとしても、不倫相手に対して慰謝料を請求することは難しくなります

2、慰謝料請求をする場合に証拠になるものは?

不貞行為を理由にして慰謝料を請求する際には、「不貞行為があった」という事実を証明するため、以下のような証拠を集めましょう。

  1. (1)性行為の写真や動画

    配偶者と不倫相手がはっきりと写っている性行為の写真や動画があれば、不倫を立証する直接的な証拠となります。

  2. (2)肉体関係を匂わせるメッセージのやり取り

    メール、LINE、SNSなどで肉体関係を匂わせるメッセージのやり取りがなされている場合
    にも、不倫を立証する間接的な証拠となります。

    もし、ホテルの位置情報や部屋番号などがメッセージに残されていたら、それもワンナイトの事実を証明するための間接的な証拠として役立ちます。

    また、不倫相手から「奥さんにバレなかった?」などのメッセージが送られてきている場合には、不倫相手が配偶者のことを既婚者だと認識していた証拠にもなります

  3. (3)ホテルの領収書

    ビジネスホテルなど通常の宿泊施設の領収書は、「配偶者がいつ、どこに宿泊したのか」を証明する証拠になりますが、それだけでは不倫の証拠としては十分ではありません。

    しかしメール、LINE、SNSなどのメッセージのやり取りと組み合わせることによって、宿泊施設で肉体関係があったことを裏付ける証拠になりえます。

    また、通常の宿泊施設とは異なりラブホテルはセックスすることを前提に利用するため、
    ラブホテルの領収書が残っていた場合には、配偶者の不倫を立証する有力な証拠になる可能性があります。

  4. (4)不倫を認めた際の音声データ

    不倫の疑いのある配偶者を問いつめる際には、ボイスレコーダーで録音をしておくことをおすすめします。

    十分に証拠がない状況であっても、会話の流れで配偶者が不倫を認めた場合には、その音声の記録が有力な証拠となります

  5. (5)探偵による調査報告書

    ご自身で不倫の証拠を集めることが難しい場合には、探偵や興信所の利用も検討してください。

    妻が「ワンナイトがあった」と認識していても、実際には夫が不倫相手との関係を継続している可能性もあります。
    もし、調査の結果をまとめた調査報告書で、ラブホテルに出入りしている場面や不倫相手の自宅に寝泊まりしている場面の写真が添付されていれば、不倫を立証する有力な証拠となるでしょう

3、不倫慰謝料を請求する流れ

不倫による慰謝料を請求する場合には、以下のような流れで請求します。

  1. (1)証拠の収集

    夫が他の女性と一夜を過ごしたとしても、夫はその事実を素直に認めず、不倫があったことを否定する可能性が高いでしょう。

    そのため、夫が不倫を否定していてもその主張を覆すことができるだけの証拠を事前に収集しておくことが大切です

  2. (2)内容証明郵便により書面の送付

    不倫を証明する十分な証拠が集まった段階で、慰謝料の金額や支払い期限などを記載した書面を作成して、内容証明郵便で送付しましょう。

    内容証明郵便は「いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送付したか」を証明する記録となるため、後日に「慰謝料を請求されたなんて聞いていない」と夫や不倫相手が主張して支払いを拒んだ場合の対策にもなります。
    また、不倫慰謝料を請求できる期限の時効は「不貞行為の事実を知ったときから3年」ですが、内容証明郵便で慰謝料請求をすれば、一時的に時効の進行をストップすることができます

  3. (3)交渉

    内容証明郵便が夫や不倫相手に届いたら、相手側との交渉を開始することになります。
    慰謝料の金額や支払い時期、支払い方法などの条件を定めていきましょう。

    なお、慰謝料の支払いを分割払いにしてしまうと、相手の支払いが滞る可能性があります
    慰謝料の支払いは、できるだけ一括払いで求めましょう

  4. (4)合意書の作成

    慰謝料に関する条件について合意が成立した場合には、口頭による合意で済ませるのではなく、必ず、合意の内容を書面に残しましょう。

    また、やむを得ず慰謝料の支払いを分割払いにする場合には、合意書は公正証書として作成してください。
    公正証書にしておくことによって、後日に支払いが滞ったとしても、裁判をすることなく相手の財産を差し押さえることができます

  5. (5)裁判

    相手が不倫を認めない場合や金額や支払い条件などで合意に至らない場合には、慰謝料請求訴訟を提起することになります。

    裁判(訴訟)では、慰謝料を請求する側が、「不倫があった」という事実を証拠によって立証していく必要があります。
    裁判における立証には法的な専門知識が必要になるため、訴訟まで進行したら、弁護士に依頼するのがベストです

4、ワンナイトを理由に離婚をする場合

「たった一夜の過ちでも許せないから、離婚したい」と決意したなら、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)ワンナイトでも離婚は可能

    夫婦間の話し合いで夫が離婚に応じてくれるのであれば、協議離婚という方法で離婚をすることができます。
    しかし、夫がワンナイトの事実を否定していたり、ワンナイトを認めていても離婚に応じてくれなかったりする場合には、協議離婚をすることはできません。
    このような場合には、離婚調停という法的手続きに進行していくことになります。
    そして、調停をしてもまだ夫が離婚を拒否する場合には、最終的には離婚訴訟を起こして、裁判所に離婚の可否を判断してもらうことになります。これを「裁判離婚」といいます。

    裁判離婚は、以下のような法定離婚事由がある場合に限り、認められます。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでない
    • 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    本コラムの前半で説明したとおり、ワンナイトであっても不貞行為であることに違いはあありません。
    したがって、証拠によってワンナイトの事実が立証できるのであれば、裁判によって離婚することができます

  2. (2)離婚問題について弁護士に相談するメリット

    以下では、離婚問題について弁護士に相談することのメリットを解説します。

    ① 不倫の立証に必要な証拠をアドバイスしてくれる
    不倫の証拠にはさまざまなものがあり、組み合わせによって証拠としての価値も変わってきます。
    また、どのような証拠であれば不倫を立証できるのかは、具体的な事情によっても異なってきます。

    弁護士であれば、個別の事例に応じた具体的な事情をふまえつつ、証拠収集に関するアドバイスをすることができます

    ② 相手との交渉を任せることができる
    弁護士に依頼をすれば、離婚や慰謝料に関する、夫や不倫相手との交渉を任せることができます

    離婚や慰謝料に関する交渉では互いの主張や金銭的利害が衝突することになるため、離婚を要求したり慰謝料を請求したりする側としても、多大な精神的ストレスを感じることになります。
    しかし、弁護士に交渉を任せれば、ストレスを大幅に軽減できるでしょう。

    ③ 有利な条件で離婚できる可能性が高くなる
    夫と離婚する際には、親権や養育費、慰謝料や財産分与などのさまざまな条件について定める必要があります。

    専門家である弁護士のサポートを受けることで、有力な条件で離婚する可能性を高めることができます

5、まとめ

ワンナイトの不倫であっても、不倫を立証する十分な証拠があれば、夫や不倫相手に対して離婚や慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚にあたっては、慰謝料のほかにもさまざまな条件を決めなければなりません。
ひとりで手続きや交渉を進めることに不安やストレスを感じている方は、弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所に連絡いただければ、証拠収集に関するアドバイスから交渉や訴訟のサポートまで、離婚事案の経験豊富な弁護士が対応いたします

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