借金を一部だけ任意整理はできる! その注意点を弁護士が解説

2023年12月11日
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借金を一部だけ任意整理はできる! その注意点を弁護士が解説

2022年度(令和4年度)に東京都豊島区へ寄せられた消費生活相談は2340件でした。

「借金返済の負担が重い…」と感じている場合には、任意整理が有力な選択肢となります。任意整理は自己破産や個人再生と異なり、特定の借金だけを選んで行うこともできます。親族や友人からお金を借りている場合や、保証人になってもらっている場合には、迷惑をかけないために任意整理を行うことも検討しましょう。

本コラムでは、借金の一部だけを任意整理する場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 池袋オフィスの弁護士が解説します。

1、借金の一部だけを任意整理することは可能

「任意整理」とは、借金の減額や返済スケジュールの変更を認めてもらうため、債権者と交渉する手続きです。
そして、任意整理は借金の全額に適用する必要はなく、一部だけを対象とすることができます。

  1. (1)任意整理と自己破産・個人再生の違い

    任意整理は、法的手続である自己破産や個人再生とは異なり、債権者との間で私的に交渉を行って債務負担を軽減してもらう手続きです。

    自己破産や個人再生では、原則としてすべての借金などが免除や減額の対象となります。
    これに対して任意整理では、対象とする借金などを債務者が選ぶことが可能です
    したがって、一部の借金だけを任意整理して、その他の借金は任意整理しないこともできます。

  2. (2)借金の一部だけを任意整理するメリット

    借金の一部だけに対する任意整理が行われる理由としては、「親族や友人などに迷惑がかかることを避けたい」という場合が多いといえます。
    たとえば親族や友人から借金をしている場合、自己破産や個人再生をすると、親族や友人からの借金も免除や減額の対象となってしまいます。
    しかし任意整理であれば、親族や友人からの借金を対象外とすることで、約束どおりに借金を返し続けることが可能になるのです

    また、親族や友人が保証人となっている借金について債務整理をすると、保証人である親族や友人に対して請求が行われてしまいます。
    この場合にも、親族や友人が保証している借金を外して任意整理を行うことにより、保証人への請求を避けつつ借金の負担を軽減することが可能になります。

2、借金の一部だけを任意整理するときの注意点

以下では、借金の一部だけを任意整理する場合に注意すべき点を解説します。

  1. (1)税金や社会保険料は任意整理できない

    税金を徴収する税務署や自治体、および社会保険料(または国民年金保険料・国民健康保険料)を徴収する年金事務所や自治体などは、任意整理に応じてくれません。

    税金や社会保険料の支払いが難しい場合には、税務署・自治体・年金事務所などの窓口に行き、猶予制度を利用できないかどうか相談しましょう

  2. (2)クレジットカードはすべて利用できなくなる

    クレジットカードについては、いずれか一社に対する債務を任意整理しただけでも、すべて使用停止となります
    これは、任意整理の情報が個人信用情報機関(いわゆる「ブラックリスト」)に登録された後、カード会社が途上与信(=利用者の信用状況を定期的にチェックすること)によってその情報が確認した場合には、規約に基づいてクレジットカードが強制解約となってしまうからです。

    つまり、二社以上のクレジットカードを使用している場合でも、使いたいクレジットカードのカード会社を避けて任意整理するということには意味がありません。
    この場合には、すべてのクレジットカードの利用料金について任意整理を試みる必要があります。

  3. (3)任意整理後に自己破産すると、偏頗(へんぱ)弁済を疑われることがある

    任意整理をした後で、再び債務を支払えなくなって自己破産をしてしまうと、破産管財人に偏頗弁済を疑われる可能性があります。
    「偏頗(へんぱ)弁済」とは、一部の債権者だけに債務の弁済等を行うことです。
    そして、偏頗弁済は債権者平等の原則に反するため、破産管財人による否認の対象となるおそれがあります。

    一部の債務だけを任意整理した場合、任意整理の対象外とした債権者に対しては弁済を継続する一方で、任意整理をした債権者に対しては弁済しないという状況が発生します。
    この状況が破産管財人によって偏頗弁済にあたるとして否認されると、弁済金を返す必要が出てきます。また、仮に否認された債務について親族や友人が保証していた場合には、保証人が弁済するよう請求されてしまいます。
    このような事態を避けるため、任意整理を行う際には、事前に弁護士に相談してください

3、任意整理のご相談は弁護士へ|相談のメリット

以下で、任意整理について弁護士に相談することの主なメリットを紹介します。

  1. (1)適切な債務整理手続きを選択できる

    借金などの負担を軽減する債務整理手続きの方法は主に任意整理・個人再生・自己破産の三種類であり、状況に応じて選択すべき手続きが異なります

    弁護士であれば、債務の具体的な状況や今後の希望についてしっかりと考慮したうえで、適切な債務整理の方法を提案することができます。

  2. (2)貸金業者からの取り立てが止まる

    弁護士は債務整理を受任すると、すべての債権者に対して受任通知を発送します。
    そして、消費者金融などの貸金業者は、弁護士の受任通知を受領した時点で、原則として債務者に対する直接の取り立てが禁止されます(貸金業法第21条第1項第9号)。

    貸金業者からの取り立てに悩んでいる方は、弁護士に債務整理を依頼しましょう。

  3. (3)任意整理の成功率が高まる

    弁護士であれば、合理的な返済計画を立てたうえで、債権者にとってもメリットがあることを伝えながら、任意整理に応じるように債権者を説得することができます。

    弁護士が適切に交渉を進めることにより、任意整理が成功する確率も高められるでしょう

4、任意整理をした後はどうなる?

任意整理をした後は、債権者との合意内容に従って借金の返済を継続することになります。

任意整理をした事実が知人や勤務先などに知られる可能性は低いといえます。
ただし、任意整理をしたという情報が個人信用情報機関に登録されて、ローンやクレジットカードが利用できなくなる点には注意が必要です。

  1. (1)合意内容に従って返済を継続する

    任意整理について債務者と債権者が合意した場合には、合意内容をまとめた書面を双方の間で締結します。

    合意書面には、利息や遅延損害金をカットする旨や、任意整理後の返済スケジュールなどが記載されます。
    そして、債務者は合意書面の内容に従い、債権者に対する返済を継続することになります。

  2. (2)知人や勤務先などに知られる可能性は低い

    任意整理をした事実は、自己破産や個人再生と異なり、官報で公告されることはありません
    自分から口外しない限りは、任意整理をしたことが知人や勤務先に知られる可能性は低いでしょう。

    なお、仮に任意整理の事実が勤務先に知られ、そのことを理由として解雇やその他の不利益な取り扱いを受けてしまった場合には、弁護士に相談した上で、対応しましょう。

  3. (3)個人信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリスト入り)

    任意整理をすると、その情報(=事故情報)が個人信用情報機関に登録されます。
    これは俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれるものです。

    任意整理の場合、個人信用情報機関に登録された事故情報が5年間程度残ります
    その間、任意整理をした人は、以下のようなことができなくなってしまいます。

    • 新規ローンの借入れ:銀行や貸金業者は、融資審査の際に個人信用情報機関のデータベースを確認するため、事故情報が登録されている間は、原則として住宅ローン・オートローン・カードローンなどを利用することができません。

    • クレジットカードの利用:任意整理の事故情報が登録されると、途上与信によって間もなくクレジットカードが強制解約となります。

    • 携帯電話端末の分割払い購入:携帯電話端末を分割払いで購入する際にも、与信を行う業者が個人信用情報機関のデータベースを確認します。そのため事故情報が登録されている間は、原則として携帯電話端末の分割払い購入はできず、一括で購入する必要があります。


    なお、5年間程度が経過して事故情報が抹消されると、再びローンやクレジットカードなどを利用できるようになります。
    個人信用情報機関に事故情報が登録されるのは、任意整理だけでなく、個人再生や自己破産についても同様です。
    債務整理を行うかどうかは、ブラックリスト入りというデメリットも考慮したうえで判断する必要があります。

5、まとめ

一部の借金だけを任意整理すること自体は可能ですが、ご自身だけで対応すると成功しなかったり、予期せぬリスクを負ってしまったりするおそれがあります。
債務整理の手続きを進める際には、事前から弁護士に相談して、適切に行うことが大切です。

ベリーベスト法律事務所では、債務整理や借金問題に関する相談を承っております。
任意整理をしたいと検討されている方も、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています